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モトキside
もう、会うことは無いと思っていた。それでもいいと思っていた。
俺の始まった瞬間に終わった恋。終わったはずなのに忘れられなかった恋。
その子が今、俺の目の前にいる。
一方的じゃなくて、確かにこの子の目
には俺が映っている。
その事実が嬉しくて、ついつい顔が緩んでしまう。
今日は新入部員が来る日。ということは、2年間、一緒にいられるということだ。そんな一気に最高潮まで上がったテンションを隠そうと、必死に取り繕いながら言葉を発した。
モトキ『こんにちは。新しい1年生の子だよね？え〜っと...まず、座って？』
お互いに一通り自己紹介を終える。
AAさんかぁ...
ずっと何もかも知らないままだったから、名前を知った、それだけのことに胸がいっぱいになる。
すると少しの間沈黙が起きる。俺の胸がうるさいくらいに鳴って、息が吸いづらい。
静かだからこそ、この音が聞こえるんじゃないかとひやひやする。
モトキ「えっと、Aさん？質問コーナー、やりませんか？」
苗字だけど、自分から話しかけることができた。少し間抜けな声を出した彼女が、凄く可愛かった。
お互い、よくある質問をしあう。今日は沢山、彼女のことを知ることができた。
パート部屋から音楽室へ帰る時、彼女と並んで歩く。暖かくて、優しくて。凄く幸せな時間だった。
ミーティングも終わり、帰るだけになったとき。一人で学校の玄関から出ていく彼女を見かけた。
いつの間にか、俺は「一緒に帰ろう」と声をかけていた。
...まって、今日初めてあった人に一緒に帰ろうって言われるのって、凄い気持ち悪いじゃん！
あわてて「何でもないよ」と伝えようとしたが、彼女に『誰かと一緒に帰っているのか？』と聞かれた。
少し不安そうな顔をしている。迷惑だ、なんて思っているのだろうか。
そんなこと、絶対に無いのに。
あいつらは大丈夫だと伝えると、ホッとしたような表情で『よろしくお願いします』と言われた。
今、暗くてよかった。
こんなに赤くなった顔、見られたら一瞬でばれちゃうよ。
俺は君が大好きだって。
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作者名：歩く国語辞典 | 作成日時：2019年8月12日 23時
