サイコパス ページ44
「すんませーんおっそくなりましたぁ」
「切腹しろ」
「開口一番に物騒なこと言わないでくださいよ」
…二度寝をかまして起床してから今朝は土方さんと市中見回りであったことを思い出した私は、時計を片手にやっちゃった感を噛み締めては一応急いで支度を済ませた。朝ごはんは食べている時間はないので見回りを終えてから食べることにした。布団をぱっぱと片付けて壁にぶらさがるハンガーに掛けられている隊服を素早く身に付けて、漸く馴れてきた短い髪を櫛でとかし、顔を洗って歯磨きをして外に飛び出した。その時間を合計するとほんの10分程度で、これは頑張ったなと思っていたのだけれど、まぁそれでも遅刻したという事実は変わらないし、早く支度を済ませるように努力したとはいえそれが正当化されるわけではないので当然ながら土方さんには怒られてしまう。
既に、きっと集合時間よりも5分ほど早く待っていたのだろう土方さんはタバコを吸いながらにこちらに鋭くさせた視線を寄越した。相変わらず、安心安定の鬼っぷりだ。…安心ではないか。
とはいえ、朝から、しかもおはようの挨拶を抜きにして切腹を命じることはないのではないだろうか。思わず顔をしかめて見せる。
「土方さんは切腹切腹言い過ぎてその事柄の恐ろしさを忘れてますよ、思い出してくださいお腹を斬るんですよ自分で」
「そうだが」
「うわサイコパスだ」
「…朝から絶好調だなお前は…」
こめかみをピクピクと痙攣させながらに土方さんは怒気を含んだ声でそう言っては、こんなことに体力を使いたくないというように疲れた溜め息を漏らして、行くぞ、と呟いては先に歩いていってしまう。特に慌てることなくそれを追い掛ける。
「まったく、自分の女に切腹させようとする人なんて見たことないですよ」
「自分の男をサイコパス呼ばわりする奴もな」
彼の隣に並んでは今日もまた小言ばかりを言い合っていく。まだまどろんでいるような街並みを見回しながら。世界のあくびのような風が不意に吹いては、髪が揺れる。
…晋助とさよならを言い合ってから。あれから時間は過ぎて、夏が始まろうとしていた。なんだか酷く昔のことのように思えてしまうけれど、ほんの数か月くらいのことなのだ。それからは大きな事件も何もなく、平和な日々を過ごしていた。私はもうすぐ入道雲が出てくるだろう青空を仰いでは、何処か遠くに居るのだろう、嘗ての恋人のことを考えてみた。
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Karin(プロフ) - この作品が好きすぎてもう4回ぐらい読み返してます。とっても面白くて、感動的で、大好きな作品です!銀魂のedにも使われていた桜音という曲を聴いた時に、この作品の高杉と主人公のことみたいだなぁと感じました。高杉と恋仲だった頃の話も見てみたくなりました笑 (8月4日 19時) (レス) id: 9e7f4b97d1 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ミウラさん» ありがとうございます!こんなご時世ですので暇をもて余すこともあるかと思いますが、私の作品なんかで良ければ読んでやってください!! (2020年5月9日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ミウラ(プロフ) - ピピコさん» 嬉しいです!楽しみに待ってます(o^^o)その間ピピコさんの小説何度も読み返しますね笑 (2020年5月9日 21時) (レス) id: 3103cb23ea (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ミウラさん» ミウラさん!ありがとうございます…!!最後まで読んでくださり感謝です…!!高杉さんが出てくるシーンは本当に難しかったです…自分でも書いててしんどかった…!!高杉さんのお話もそのうち書きたいなぁと思っていますのでお楽しみに(o^−^o) (2020年5月9日 19時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ミウラ(プロフ) - 一気に全巻読めちゃうくらい面白かったです!晋助様のシーンがしんどすぎてずっと泣いてました…笑次は晋助様落ちの小説も書いて欲しいです! (2020年5月9日 8時) (レス) id: 3103cb23ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2018年6月14日 19時