あの人らしい 高杉side ページ5
…きっと、Aの両親は自分達の子供を護るために、Aを生かすために、必死に逃がしたのだろう。自分達の命なんて二の次で、子供の命を失わせないために、命懸けで護り抜こうとしたのだろう。親からしたら、子供というのは、自分達よりも、何よりも大切で、護るべきものなのだそうだ。俺の両親が俺のことをそんな風に思っているのかは知らないし、興味もないのだが。それに、完全に勘当を言い渡される前に自ら家を飛び出して松下村塾に入った俺のことなんてもうどうとも思っていないだろうと思うが、世間一般的にはそういうものなのだそうだ。誰かに教えてもらった訳でもないけれど、誰でも知っている道徳的な感覚でそれを知っていた。自分がそれに当てはまらなかったとして、特に悲しくもなかった。
…だが、Aの両親にとって、Aは何としてでも護るべき存在だった。だから、死に物狂いで襲撃してきた天人に抵抗して逃げ道を何とか作って、Aを逃がしたのだろう。自分の命よりも大事なものがあって、それを護るためなら死ぬこともいとわないという感覚を子供だった俺には理解できなかったけれど、そういうものは確かにあるものなのだと俺は感じた。
それをAもわかっていて。自分が愛されていることを直に感じていて。だからAは、そんな大切にしてくれた大切な人達を護れなかったことを悔やんでいる。
…自分を護るために死んだ両親を想っては、救えなかったことを嘆き続けている。
『私ね、思ったんだよ。お父さんもお母さんも居なくなったのに、なんで私だけここに居るんだろうって』
どうしていいか、分からなかった、と。Aは言う。俺は頷くことも出来ないで、ゆっくりと歩きながらに背中から聞こえてくる言葉を耳にしていた。『でもね、』。
『松陽が、教えてくれたの』
『君はちゃんとここに居る。それはきっと、確かな意味を持っているのです』
『…君は生きるべくして、ここに居るのですよ』
『私が生きてることには意味があるんだよって、言ってくれたの』
あぁ、なんてあの人らしいのだろう。両親を失い、生きる意味をなくしかけたAにそう告げた松陽の声を、すっ、と想像できた。その言葉はきっと、Aの確かな救いになったのだろう。だから、Aはちゃんとこうして生きているのだ。こうして血を流しているのだ。
『…だから、もう消えちゃいたいとか、そんなこと言わないって、心の中で松陽に約束したんだよ』
強くなるって、決めたんだよ、と。
…だからAは、こんなにも真っ直ぐで居られるのだ。
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Karin(プロフ) - この作品が好きすぎてもう4回ぐらい読み返してます。とっても面白くて、感動的で、大好きな作品です！銀魂のedにも使われていた桜音という曲を聴いた時に、この作品の高杉と主人公のことみたいだなぁと感じました。高杉と恋仲だった頃の話も見てみたくなりました笑 (8月4日 19時) (
レス) id: 9e7f4b97d1 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ミウラさん» ありがとうございます！こんなご時世ですので暇をもて余すこともあるかと思いますが、私の作品なんかで良ければ読んでやってください！！ (2020年5月9日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ミウラ(プロフ) - ピピコさん» 嬉しいです！楽しみに待ってます(o^^o)その間ピピコさんの小説何度も読み返しますね笑 (2020年5月9日 21時) (レス) id: 3103cb23ea (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ミウラさん» ミウラさん！ありがとうございます…！！最後まで読んでくださり感謝です…！！高杉さんが出てくるシーンは本当に難しかったです…自分でも書いててしんどかった…！！高杉さんのお話もそのうち書きたいなぁと思っていますのでお楽しみに(o^−^o) (2020年5月9日 19時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ミウラ(プロフ) - 一気に全巻読めちゃうくらい面白かったです！晋助様のシーンがしんどすぎてずっと泣いてました…笑次は晋助様落ちの小説も書いて欲しいです！ (2020年5月9日 8時) (レス) id: 3103cb23ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ピピコ
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時：2018年6月14日 19時
