私だけなら ページ21
「あぁ、まぁ痛みはそりゃあるが、騒ぐほどのことでもねェよ」
と、私の言葉に土方さんはそう返しては、自身の右腕に巻かれている白色をした包帯に視線を落とした。その包帯は今朝変えられたもので、取りかえる前につけていたものは赤黒い血が滲んでしまっていたのだけれど、どうやら血は止まったらしい。右腕だけじゃない。左腕にも、足にも背中にも、包帯は巻かれている。着流しに隠れてあまり見えないけれど、軽く着こなしている着物の隙間から、包帯はチラリと顔を見せていた。それを目にしては、私は唇を引き結んだ。私の身体にも包帯はあちらこちらに巻かれている。やりすぎだろと言いたくなるくらいに。そんなぐるぐる巻きにするほどのものじゃないですよと医者に言ったものの、いいからつけておけ、だそうだ。
…私だけならまだ良かった。私だけが鬼兵隊の船から出るために反抗して、抗って、勝手に戦って傷を負うのなら良かった。言ってしまえばこれは、嘗ての私達のせいで起こったことなのだから。なのに、土方さんや隊士の皆、銀時やその従業員ちゃん二人に、小太郎に辰馬。二人についてきた仲間たち。彼等まで沢山の傷をつけられることになってしまった。そのことを思うと、胸を痛ませずにはいられない。
けれど、また顔を曇らせたら気を遣わせるだけだ。なんとか小さく笑みを浮かべて見せた。
「お前はどうだ」
「私は大丈夫ですよ、まったく、入院なんてホント大袈裟でした」
「それなりに斬られたんだから仕方ねェだろ」
まぁ、そうなのだけれど。出血も酷いと言えば酷い方だったし、「念のため」と入院せざるを得なかったのかもしれない。それに、多くの医者は自分の判断ミスのために人を死なせたくはないのだろう。昨晩は仕方なく入院したけれど、退屈だった。
今朝に怪我の具合と血圧を確認してもらってから、私と土方さんを含め入院していた数人の隊士達は退院となった。私達よりも重傷のため、まだ病室に居る隊士も居るのだけれど。明日にでもお見舞いに行こうと思う。
「……つか、さっきから気になってたんだが、」
「何です?」
土方さんは懐からタバコを取り出しては流れるように口にくわえて、ライターのスイッチをカチリと押しては火をつけた。そうして続ける。
「髪。整ってんのな」
「あぁ、はい。退院してからすぐに、美容室行ったんですよ」
土方さん達には先に屯所に帰って貰って、私は今も少々寄り道をしたのであった。
……美容室と、それからあと、一件だけ。
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Karin(プロフ) - この作品が好きすぎてもう4回ぐらい読み返してます。とっても面白くて、感動的で、大好きな作品です!銀魂のedにも使われていた桜音という曲を聴いた時に、この作品の高杉と主人公のことみたいだなぁと感じました。高杉と恋仲だった頃の話も見てみたくなりました笑 (8月4日 19時) (レス) id: 9e7f4b97d1 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ミウラさん» ありがとうございます!こんなご時世ですので暇をもて余すこともあるかと思いますが、私の作品なんかで良ければ読んでやってください!! (2020年5月9日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ミウラ(プロフ) - ピピコさん» 嬉しいです!楽しみに待ってます(o^^o)その間ピピコさんの小説何度も読み返しますね笑 (2020年5月9日 21時) (レス) id: 3103cb23ea (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ミウラさん» ミウラさん!ありがとうございます…!!最後まで読んでくださり感謝です…!!高杉さんが出てくるシーンは本当に難しかったです…自分でも書いててしんどかった…!!高杉さんのお話もそのうち書きたいなぁと思っていますのでお楽しみに(o^−^o) (2020年5月9日 19時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ミウラ(プロフ) - 一気に全巻読めちゃうくらい面白かったです!晋助様のシーンがしんどすぎてずっと泣いてました…笑次は晋助様落ちの小説も書いて欲しいです! (2020年5月9日 8時) (レス) id: 3103cb23ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2018年6月14日 19時