【銀魂】己の行く道 貴方の隣で【土方十四郎】

猛抗議　土方side ページ16

土方side


…あっという間だったような、とてつもなく長い時間だったような。何とも言えない感覚だった。Aが囚われていると思われる鬼兵隊の船の在処を突き止めてから、俺達は直ぐ様現場に急行し、そうして壮絶な戦いは幕を開けたのだけれど。正確な時間を計算してみるとその戦いはおよそ四時間ほどに及んでいた。討ち入りなどに出ていて、刀を握り締めて暴れていると、時間の感覚を失う。腕時計なんてものは持っていくわけもないので、戦いが終わらなければ時刻を確認することは出来ないのだ。刀を片手に腕時計を見る余裕なんてあるわけがない。もしそんな暴挙に出るような奴が居たとすれば、まぁその隙に斬られることは間違いないだろう。戦闘において、時間なんてものは不必要だ。そんなものは事後でいい。

そんな訳で、戦いを終えてパトカーに乗り込み、車内のナビのモニターの端に記されている現在時刻を見てあれから四時間が経過していたのだということを認識して、俺はまだそんな時間だったのか…とも感じたし、もうそんなに経っていたのか、という気もした。非現実から通常の現実に戻ってくると、いつもこんな不思議な感覚を覚えている。


そうして、パトカーに乗り込んだ俺達はそのまま病院へと直交した。夜中の急患で、しかも大人数。討ち入りの後はいつも江戸にある大病院に世話になっているのだが、疲れきっている医者や看護師、職員達の顔を見て、申し訳なさを感じないわけにはいかなかった。

重傷者から軽傷者までと負傷状況はそれぞれだが、重傷を負った者は即入院が決定し、軽傷の者はその場で手当てが施された。俺やAの場合は重傷のカテゴリーに入れられたようで、だが動けないほどではなく、一日だけ入院をしておけと医者に指示され、一晩は清潔感の漂う病室で過ごすことになった。


『先生ー、大袈裟ですよこんなの。私は大丈夫なんで、その分病室とか他の患者さんに回してあげてくださいよ、ね？ね？』


という感じでAは猛抗議をしていたのだが、医者に俺、そして近藤さんの説得により渋々一日入院を承諾したのだった。どうにも入院をしたくなかったようだ。恐らくは、俺との約束が関係しているのだろうと考えた。


『…今夜、土方さんのお時間を私に少しだけください』
『お話したいことがあります』


一週間前、Aが姿を消す数時間前に、アイツはそう言った。その約束は今回のことで先送りにされてしまったけれど、俺もAもその約束を忘れてはいない。お互いに忘れられていない約束は、どれだけ時間が空こうともなくなりはしない。

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