そばにいさせて 3【怪盗キッド】

重ねたポーカーフェイス 1 ページ31

平日の早朝。


本来であればぐっすりと眠っている時間だが、私は快斗の部屋で椅子に座っていた。


目を瞑っているため、少しうとうとしてしまう。




「あとちょっとだ」




快斗が私の周りを歩き、髪の毛をセットしていく。


ヘアスプレーの音と足音が部屋をまわる。






「……ねぇ、本当にやるの？」




私は不安そうな声で問いかけた。




「わりぃな……。次の宝石を盗む時、この作戦しか方法がねぇんだ」





「全然いいんだけど……でもやっぱり学校は厳しいよ……」




「1番練習しやすいだろ？」



私はゆっくりと目を開け、快斗を見た。




快斗はいつもと違う姿をしている。

まるで女の子のような髪。
肌、目、口。


そして女子用の制服を着ている。




そう、快斗が私に変装しているのだ。




快斗は私の目の前に立ち、手を腰に当てた。

そしてキリッとした表情で頷く。



「よし！出来た！」





快斗が部屋の端から少し大きめの鏡を持ってくる。

自分の写った姿を見て、私は驚いた。






「凄い……快斗にしか見えない」




私は自分の肌に手を当て、顔を動かして色んな角度から見る。



どっからどう見ても快斗だ。

声以外。





「名付けて！ドキッ！入れ替わっちゃったけどポーカーフェイスで乗り切れるか作戦！」




私の姿をした快斗が笑顔で手を叩く。





「作戦名クソダサいので破局していいですか？」


異様な光景に少し気持ち悪さを感じた。




快斗はポケットから、小さな機械を取り出す。


そして、私の着ている学ランの襟元に付けた。





「これで俺の声が出るようになる」



快斗がスイッチを押した。




「あーあー。うっわ！快斗だ！」



完全に快斗の声になっている。

少しワクワクしてきた。





「んじゃ、今日1日頑張ろうね！快斗！」



快斗が私の声で話しかける。

自分が聞く声と相手が聞く声は変わるって言われてるけど、こんな声なのかと今更実感した。





「……よろしくお願いします」




ということで今日1日私達、入れ替わります。

重ねたポーカーフェイス 2→←世紀末の魔術師 後日談

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す