そばにいさせて 3【怪盗キッド】

私達を繋ぐもの 27 ページ28

〜コナン君視点〜




「まんまと騙されたぜ」

新一の姿をしたキッドは背を向けたまま立っていた。




「まさかあの白鳥刑事に化けて船に乗ってくるとはなぁ」




キッドが指笛を鳴らした。

すると事務所の開いた窓から、白い鳩がキッドの肩へと降り立つ。



そしてキッドは道路へと歩き出した。

俺は続けて話す。




「お前、わかっていたんだな。あの船の中で何か起きること」




キッドは歩きながら次々と鳩を出していく。



「確信はなかったけどな」


「もう一つ。お前がエッグを盗もうとしたのは、本来の持ち主である、夏美さんに返すためだった。そして喜市さんが、世紀末の魔術師と呼ばれていたことを知っていた」



「ほぉ、よく気づいたな？」



キッドは道路の真ん中に立ち、止まることなく鳩を出し続けた。



俺は鼻をならす。



「予告状を見ていない、ましてや英語は全くと言っていいほど出来ないAが、"世紀末の魔術師"と和訳したとき気づいたんだよ。意味がある言葉だから、Aは事前にお前から聞いていたんじゃねーかって」



「ほー」




キッドは鳩を出す手を止め、顔だけ俺に向ける。







「そして白鳥刑事とわかったのはお前の行動だ」



「行動というと...？」



「何かとAに気を遣っていたよな。初対面のはずなのに」



「...ふっ。言っただろ？Aは"おっちょこちょい"だからってな」




キッドはゆっくりと手を広げる。

俺は先ほどよりも低い声を出した。





「早く行ってやれよ」




キッドは少し驚いた表情をする。



「てっきり止められるかと」



俺は拳を握りしめ、下を向いた。




「Aが...あんなに泣くのを俺は初めて見た。そして、あんなに無茶をしたのもだ」




キッドは眉をひそめ、前を向いた。

表情が見えなくなる。


少し声を大きくして話す。




「こんなに大事にしたいと思える人が、Aにはできたってことだ。いつか......きっと...俺とお前が素で会うことがあるかもしれねぇ。その時俺は...きっと...」



「......名探偵。一つ助言してやるぜ。世の中には、謎のままにしといた方がいいこともあるってな」







「新一〜！？」



事務所の階段から蘭の声が聞こえた。


その瞬間、鳩が一斉に飛び出しキッドの姿が消える。




俺は高く飛んでいく鳩を眺め続けた。

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