◆ 夏恋花火 8 ページ13
大きな花火が打ち上がった後、花火は一旦休憩でもしてるのか今まで連発されていた音が静かになった。
りょう先輩はこっちを見つめたまま、動かない。
どうしたらいいのか分からなくて、その目を見つめるしかない。
吸い込まれそうなほど、綺麗な瞳。
なにもかも見透かされてそうな余裕の目。
り「A、好きです」
「後輩を...かっ...からかっちゃいけないですよ?!」
り「からかってなんかないよ」
「えっ..すっ..好きって..その...普通の?!」
り「普通じゃない好きって?」
「あ...ほら!友達とか!!」
り「もーう、信じてないの?」
そういいながら、りょう先輩は半ば強引に私の手を引っ張って私の体を自分の胸に収めた。
背が高いりょう先輩に抱きしめられても、全然顔が見えないし全然現実味がない。
でも、りょう先輩の心臓がどくどくと音を立ててるのは聞こえた。
これは夢じゃない。
り「こんなにドキドキすることなんてないよ?大会の日でも、走り終わった後でもね」
「なのに...そ...そんなに余裕そうな顔?」
り「余裕なんて全くないんだけどなぁ」
それは本当に余裕そうな声で。
あたたかくて、優しくて、りょう先輩に告白されたんだってやっと理解した。
またドンドンと花火が上がり始めた頃、抱きしめられていた腕が離れた。
り「ま、先輩とか関係なしに振ってくれてもいいからね」
りょう先輩はずるい。
そんなことするわけないじゃん。
そんなの分かってて、告白してるんでしょ。
今目の前にある花火を見上げるりょう先輩の横顔は、さっきみたいな悲しそうな顔ではなかった。
「わっ...わたしもりょう先輩のこと...」
り「ん?」
「すっ....好きです....」
勇気を出して言ったのに、その声は花火の音にかき消されたみたいでりょう先輩は「え?」って首をかしげてる。
「好きです!!大好きです!!」
り「やった、大好きなんておまけまで聞けた」
「え?!聞こえてたんですか?!」
り「聞こえてたよ?好きですって言ったんでしょ?」
「ずっ...ずるいです!!」
り「ありがとうね、A」
今度は大きな手が頭に伸びて、ポンポンされる。
さっきよりもさらに強く、終わりに近づいている花火に「消えないで」と願った。
175人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Ma | 作成日時:2018年8月10日 21時