＃09 守る。 ページ9
搭乗口に行く時も、カバンの中をチェックされる時も、飛行機に乗り込む時だってAちゃんはすべての初めてのことに｢すごーい！！｣と新鮮なリアクション。
今度は｢すごーい！｣しか言わない機械になってしまったようだ。
幸いあのあとあいつらとは別れたし、飛行機は違うみたい。
Aちゃんより飛行機に乗り慣れた俺は、全てのことをリアクションなしになんなくこなして、それだけにほっとした。
｢やっぱり...ちょっと怖いかも｣
｢なんでなんで、急に｣
飛行機に乗ってからも｢すごーい！！｣を繰り返してテンションMAXだったのに、急に大人しくなったと思ったらそんなことを言ってショボーンな顔になってる。
表情がくるくる変わるの、付き合う前から全然変わってない。
｢今から空飛ぶんでしょ？！｣
｢Aちゃんは座ってるだけでいいから平気！｣
｢それが怖いじゃないですか！｣
｢俺の車乗ってるのと同じだよ？｣
｢怖くなってきた...｣
なんてジェットコースターに初めて乗る子どもみたいなことを言ってるから、彼女の右手をぎゅっと握る。
｢なんかあっても俺が絶対守る...って大げさだわ笑｣
｢えええええっ....｣
Aちゃんの手が急に震えて、彼女は驚き顔。
｢えっ？！キモすぎた？！｣
｢かっこいいー....｣
なんだ、そっちか。
やりすぎて引かれたかと思って心配したわ。
｢なら安心だねぇ｣ってAちゃんは俺の方を見て笑って、今度は余裕そうに窓の外に目をやった。
なんか可愛くて、手を繋いだままスマホを構えて窓の外をのぞき込む彼女を盗撮...しようと思ったら彼女がくるっとこっちを向いて、恥ずかしそうに笑うから盗撮じゃなくて公認で撮影した。
｢としくん！ダメです！｣
｢んでよ笑 可愛いから撮っちゃった。も1回窓見てて｣
｢えー...いいよぉ....？｣
ちょっとらしぶしぶだったけど、さっきみたいに窓の外を見てくれる。
｢としくん、楽しみだね！｣
飛行機が地上から離れても、全然怖そうな素振りは見せない彼女。
本当は怖くなかったとか？？
彼女に限ってそれはないか、となると。
｢としくんが手繋いでてくれるからなんとも怖くないね！！｣
｢はっ...｣
｢ん？｣
俺も今、手を繋いでるから？なんて自惚れたことを考えてたの。
君も今、同じこと考えてたみたい。
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作者名：Ma
| 作成日時：2018年9月12日 12時
