＃49 恋した緑くんのお話。 ページ49
｢あっ、あっの！！、、Aっ、、さんと、、｣
｢あ！としみつくん！待ってたのよー！！｣
｢ちょっと！お母さん！！｣
今日のために用意した少しカチッとしたカジュアルスーツをしっかり着てるのに。
何度も車の中でAちゃんと練習したのに、全然うまく喋れなくて。
これやばいやん、って思ってまたテンパって頭真っ白だったのに、自己紹介の必要もないかのようにお母さんが｢上がって上がって！｣って手招きをする。
Aちゃんに似て小柄で可愛いお母さんだった。
｢Aにこんなに素敵な彼氏さんができるなんてねぇ｣
もう何度聞いたか分からないこのセリフにAちゃんは口をとがらせて、俺も緊張で気の利いた言葉が出てこない。
お父さんがいなくて本当によかった。
｢しかもイケメン！｣
｢ねえ！お母さん、としみつくん困ってるから！｣
｢困ってないわよ！イケメンにイケメンって言って何が悪いの！｣
｢もういいもん...｣
｢えっと...僕...実は結構特殊な仕事をしてまして...｣
これは絶対言わないといけないって決めてたんだ、これを言わなきゃってずっと考えてるから無駄にドキドキして死にそうなんだ。
｢あ！YouTuberでしょ！動画見てるよ｣
｢えっ？！｣
Aちゃんの方をバッと向くと、｢ん？私が教えたの！｣って呑気にお母さんに向かって｢ねーっ｣って笑ってる。
｢こーんな有名人の彼女がうちのふつーうなAなんて笑っちゃう｣
｢あっ...なんも言わないんすか...｣
｢言うわけないじゃない！！好きなことを生き生きとやってるあなたが素敵よ｣
｢頑張ってね｣って笑うどこかAちゃんと似ているお母さんの言葉に泣きそうになって、｢がっ、頑張ります｣って言葉が詰まった。
｢俺、絶対絶対Aさんを幸せにします｣
夕飯時になってもう帰るねとAちゃんが言うと、玄関まで送ってくれたお母さんにかっこつけてそんなことを言った。
｢としくんかっこよかった..｣
｢ん？まじ？ダサくなかった？｣
｢最初はダサかった！！｣
｢それは思ってても言っちゃダメです！！｣って運転してるから前を見ながら、左手を頭に伸ばして髪をぐしゃぐしゃにする。
｢でもよかった、ちゃーんと言えて｣
そのまま左手を彼女の右手に重ねる。
｢これであとはプロポーズだけやが｣
｢いつかな？｣
｢楽しみにしとって｣
信号が赤になったのを確認すると、身を乗り出して助手席の彼女にキスをする。
俺、君に恋をした。
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作者名：Ma
| 作成日時：2018年9月12日 12時
