＃31 楽しい。 ページ31
昨日みたいに｢私支度があるから先に入ってて｣って言われたから、大人しく先にシャワーをあびる。
髪を洗いながらそりゃあ考える。
ここまで昨日と同じ流れってことは、ここからも昨日と同じ流れにすることができるってことだ。
なーんてね。
だめだめ、普通にしてないと。
俺はAちゃんにとって素敵な彼氏なんだから！
頭からシャワーをかぶると、ちょっとだけ目が覚めた。
｢失礼します｣
トントンと優しくドアがノックされたと思ったら、髪を下ろしたAちゃんがひょっこり顔を出す。
｢俺もうシャワー終わったからどうぞ｣
｢うん！ありがとう｣
入れ替わりで、俺はそのまま湯船につかる。
疲れが一気に流れていく。
そんなに広くない風呂だけど、悪くないね。
ちらっと横を見ればAちゃんが洗顔をしてて、なんかこんなあまりにも日常が愛おしい。
風呂の縁に腕を重ねておいた上に顎を乗せて、その姿をじーっと見つめていたらそれに気づいたAちゃんが｢見てても楽しくないでしょ？｣って笑う。
｢え？めっちゃ楽しいよ｣
｢嘘でしょ？！さすがに！｣
｢早くこっち来ないかなってウキウキするのが楽しい｣
｢あとちょっと待ってね｣
Aちゃんの言ったことならなんでもすんなり聞ける自信があるわ。
あ、もちろん｢もう別れる｣とかありえん事はすんなり聞けないけどさ。
｢はーい、早くね？｣
｢わかったって！笑｣
あんまり言うと嫌われちゃいそうだから、餌の前で待てをくらってる犬と同じ気持ちで大人しくしてたら｢終わったよ？｣ってシャワーが止められた音と同時に彼女の声がした。
｢ん、どーぞ！｣
｢狭くない？｣
｢狭くてもいいから入って！｣
伸ばしてた足を引っ込めて、Aちゃんが入るスペースを作ると静かに湯船に足をつけて｢あったかいねぇ｣って気持ちよさそうに言う。
｢もっとこっち来てよ｣
隅っこの方で小さくなってるから、腕を引いてこっちに引き寄せる。
今日もタオルがAちゃんのいいところはぜんぶ隠しちゃってるけど、これはあとでいいや。
｢入れといてくれてありがとうね？｣
｢私も入りたかったもん｣
｢俺が帰ったらすぐ入れるようにしてくれたんでしょ？｣
なんか同棲してるみたい、そんなの。
こくりと小さく頷く彼女が愛おしくて、ほっぺたにチュッとキスをした。
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作者名：Ma
| 作成日時：2018年9月12日 12時
