＃12 楽しいのレベル。 ページ12
旅の始まりといえばこれだ。
そう、旅には必須のものがいくつかあるだろう。
ガイドブック？
楽しむ気持ち？
可愛すぎる彼女、Aちゃん？
全部正解だけど。
｢どこ行くの？｣
｢ん？車借りにいこうかなって｣
｢レンタカー！！｣
｢車の方が絶対楽やん？｣
旅には車も必須。
カーナビがあれば好きなところに行けるし、これは絶対にあった方がいい。
旅の内容はAちゃんに全く教えてないから、想像がつかなかったのは当たり前だ。
｢ん、CDも持ってきたよ｣
空港近くでレンタカーを借りて、車に乗るとカバンから何枚かCDを出す。
CDを持ってくるためにいつもの肩掛けバックじゃなくて、少し大きめなカバンにしたのだ。
Aちゃんとノリノリで歌いながらドライブしたかったから、ただそれだけのために俺が自分を変えるなんて。
かなり君にぞっこんみたいです。
｢どれにする？｣
｢ええええ？！としくんこれ重たかったでしょう？｣
｢重くないよ笑 全然へーき｣
俺とAちゃんが好きなバンドのアルバムを手に取ると、｢これがいい！｣って俺に見せてくる。
｢じゃあ、行きますか｣
｢レッツゴー！！｣
｢おっ、オー！！！｣
助手席の彼女をチラチラ見ながら運転していたら、｢前見て！｣って怒られたり、バラード曲を一緒になって歌ってみたら、｢としくん歌うますぎ｣って拍手されたり。
｢もう既に楽しいわ｣
｢私もだよ？｣
｢沖縄来んくても俺ら普通に楽しいよね、今更すぎるけど｣
｢岡崎で遊べばよかった？｣
｢岡崎城？｣
｢ううん、あの広場笑｣
付き合って半年。
まだまだホヤホヤの俺らは、楽しいのレベルがあまりにも低すぎて笑っちゃう。
あと広場ってアパートの隣。
俺らは半径50メートル以内くらいでも楽しいらしい。
｢としくんがいたらなーんもいらないもん｣
｢はっ...｣
｢ねえ、その｢はっ｣っていうのと｢可愛すぎる｣っていうの口癖だよね？｣
｢そんな言ってる？｣
確かにおんなじこと考えてたなって思った時は心を読まれた気がして｢はっ｣って言ってる気がする。
｢可愛すぎる｣は知らないよ。
無意識に言ってるとか、俺やばいやつじゃないですか？
｢どっちも好きなんだけどね｣
｢ふふ、そりゃよかった｣
耐えられなくなって、左手を君の右手に重ねた。
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作者名：Ma
| 作成日時：2018年9月12日 12時
