恋した緑くんのお話。(仮) 2 【東海オンエア】 (ページ10)

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＃54 エプロン。ページ10

彼女は軽率な女の子なんかじゃない。

これは素直な彼女の優しさなんだ。

そんなんは分かってるんだけどね、これはちょっと、ただでさえ風邪で弱っている俺の心臓が持たない。

｢としみつくんは座っててね｣

｢あーうん｣

俺の家のほとんど使われていないキッチンに
Aちゃんがエプロンをして立っている。

あのあと、ちょっと待っててねと家に帰ったかと思ったら、エプロンと彼女の夕飯の材料を持ってここに帰ってきて、キッチンに立って今に至るというわけだ。

もしかのもしかがあるかもしれないと思って、部屋を片付けておいてよかった。

キッチンは昨日虫さんが使って掃除もしてくれてたから綺麗だし、それもよかった。

ただ...

｢としみつくん、油ないですか？？｣

あるわけないんだよなー、
普段料理全くしないんだから。

｢ちょっと取ってくるね！エプロンここに置かせてください｣

あー、次からちゃんと油用意しとこって思った俺は多分頭が全く追いついていない。

彼女が家の中にいる？

なんでもし放題やん。
なんでもし放題ってなんだ？

あんなことやこんなこと？？

｢あー！！ばかだ｣

｢ただいまー！！｣

2階から俺の住む5階に戻ってくるだけだから、そう時間はかからないようですぐに戻ってきて、エプロンをつけなおす。

｢としみつくん肉じゃが好きですか？｣

｢ん？？....もちろん！好き好き！｣

｢結構ガッツリだけど大丈夫かなあ？｣

｢大丈夫！俺もう治ったっぽい｣

あ、これ失言。
治ったならAちゃんご飯作る意味無いやん。

でも、もうAちゃんが家にいることで頭がいっぱいで、風邪とかどうでもいいっていうのが正直なところでありまして。

｢としみつくん！味見してみてもらえますか？｣

エプロン姿の彼女が小皿を持って横に来てしゃがんで、上目遣いで俺のことを見てる。

その姿が可愛すぎて、見とれちゃって味なんてよくわかんなかった。