恋した緑くんのお話。(仮) 2 【東海オンエア】 (ページ9)

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＃53 お腹の虫。ページ9

｢はい！差し入れ持ってきました！！｣

手に握られていたのは可愛い花柄のエコバック。

｢ありがとう、こんなことまでしてもらっちゃってごめんね｣

｢いえいえ！私が勝手にやっただけだから！体調はどう？？｣

｢うん、昨日よりは全然いいかな。朝よりはちょっとだるいけど｣

｢はぁー...そんなに酷くならなかったんだね？！それならよかったよぉ...｣

ほっとした顔を見せる彼女。
Aちゃんのせいじゃないって、何度も言ってるのに。

｢あ、バック持っていくよね、中身もらってすぐ返すわ｣

｢ううん！すぐじゃなくて大丈夫！！｣

手をブンブン振って、いらないを表現する彼女。
小さい彼女がやると一生懸命さがより伝わってきてかわいすぎる。

そのとき、俺の腹の虫がグーッと音を立てた。

恥ずかし、病人なのにめちゃ食欲あるやん。

みんな気を使って優しいもの買ってきてくれてるのに。

｢あ、としみつくんお腹すいたって言ってる！｣

｢あはは、俺、意外と風邪ひいても食べるんだよね｣

｢私、フルーツとか飲み物とかばっかりでお腹の足しになりそうなものは買ってないなー...｣

｢いやいや、充分です！充分すぎです！｣

｢私、今から夕飯作るので一緒にどうですか？｣

あの時俺が一目惚れしたあの笑顔で、Aちゃんが
また何やらすごいことを言った気がした。

彼女になにか企んでいることがあるとは到底思えない。
きっと心の底から、｢俺と夕飯を食べよう｣としてくれているに違いない。

優しすぎる。可愛すぎる。

揺れ動く心に負けそうになりながらも、

｢いや、俺病人だし、またAちゃん風邪ひいちゃったら大変だよ？！｣

とうまく切り抜けたと思ったのに

｢何言ってるんですか！としみつくんが風邪ひいて大変なのにほっとくわけないでしょ？！｣

急に表情を変えて力説する彼女に圧倒され

｢じゃあ...｣

って、言葉に甘えることになってしまった。