＃56 オオカミ。 ページ12
俺の次の言葉を待っているのか、彼女は食べる手を止めたまま、俺の方を見ている。
やっぱり一目惚れしたその瞳に吸い込まれそうになる。
｢そんなかわいい格好して...この距離だと...俺も男やからさ｣
あーもう、何言ってんの。
これ絶対、俺やばいやつやん。
ただのそういう欲望を抑えられない人やん。
100歩いい方に取ってもらったとして、Aちゃんが好きなのバレたやん。
そのままキスしていいかなとか、
そのまま押し倒したいとか、
そんな欲望をなんとか押し殺したけど、自分の弱さにがっかりして、もうここから消えてしまいたい。
｢あのー....｣
｢ん？｣
絶対怖がらせた、せっかく来てもらったのに。
ご飯まで作ってもらったのに。
｢私が悪かったです、ごめんなさい！｣
｢え？！なんでAちゃんが謝るん？！｣
｢えーっと...あの...えーっと...｣
どんどん顔が真っ赤になる彼女。
俺が言いたいことは、わかってくれたみたい。
ただそれをどうやって表現したらいいかわからないって事ね。
｢怖がらんで、ちょーっとそう思っちゃっただけで俺はそんなことしないから｣
どの口がそんなことを言うのか。
自分でつっこみたくなる。
｢えーっと...｣
｢でも、オトコはみーんなオオカミだから、気をつけた方がいいかもね｣
Aちゃんみたいな素直で、可愛い子はすぐ食べれちゃいそう。
俺は頑張ったけど、力ずくで行かれたら一発だ。
｢気をつけます..？？｣
｢なんで疑問系？笑｣
｢そういう経験がないのであまり想像が...｣
あたふたしてるAちゃんが可愛くて、意地悪したくなった。
｢そんなこと言っていいの？俺もオオカミだよ？｣
あんまり怖がらせないように、ふざけた感じで｢がおー｣って狼のポーズ。
｢だっ..だめです！！｣
俺が真剣に、食べてしまおうと思ったことをAちゃんは気づいたのだろうか。
やっぱりね、
あの子達とは全く違う。
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作者名：Ma
| 作成日時：2018年6月18日 19時
