恋した緑くんのお話。(仮)【東海オンエア】 (ページ30)

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＃29 嘘。ページ30

彼女が同じアパートに住んでいるということが発覚してから、俺の生活は変わった。

俺もてつやのこと言えねえや、と思いながらも彼女に会えるように時間を考えて生活するようになっていた。

朝のゴミ出しはその日の時間通りにした。
何回か、彼女に会えて挨拶をされた。

時間がある時は、歩いててつやの家に行くようにした。
数回、彼女の帰りと一緒になってちょっと話をしながら歩いた。

ありえないくらい、うまく行き過ぎている自分が怖いと思うこともあった。
けど、彼女も笑ってよく会いますねなんて言ってくれるから、そう気にしてなさそうだ。

その日も帰りが一緒になって、一緒にアパートまで歩いた。

｢いつもお店のもう少し先から歩いてきますよね｣

彼女が俺の後ろを歩いてる時もあるから、出てきた時に見ているのだろう。

｢いっつも私服だから、お仕事もそういうオシャレなお店なんですか？｣

この帰り道の会話で俺らが知ったお互いの情報は、

彼女は可愛らしくて背が小さくて年下だと勝手に思っていたけど、同い年だということ。

彼女はついこの間ここに引っ越してきたこと。

重要なことはそれくらいで、
あとは部活とか、コンビニ弁当を見られて好きな食べ物とかを話した。

こんな、仕事のことを聞かれたのは初めてだから少し戸惑った。

戸惑ったけど、この時いえばよかったんだと思う。

最近よく聞く、youtuberなんだって。

有名人気取りみたいで嫌だったのかもしれない。
もしくは、遊んで暮らしてるって顔をされて、嫌われるのがいやだったのかもしれない。

｢まあ、普通にアパレルだよ｣

とっさに、嘘をついた。

｢へえー、としみつさんっていつもオシャレだもんね｣

心はちくっと痛かった。

その後は彼女が仕事の話を振ってくることはなく、今まで通りの帰り道だった。