#28 お名前。 ページ29
もうご近所さんなので弟さんじゃなくて、お名前教えてくださいって彼女。
さっきとは違う、隣同士を歩く俺と彼女。
もう何が何だか、頭が追いつかなくてこの距離に大してドキドキしなかった。
「えーっと、としみつ!としみつって呼んでください」
「としみつさん??名字?」
「いや...名前なんだけど...」
待って、いつもの癖で!!
いきなり名前とか何なの?!とか思われた?!
「ふふ、としみつさんって呼びますね」
「はい..お願いいたします...」
なんでそんなきっちした敬語なんですか?っておしとやかに笑う彼女はやっぱり俺のタイプだったギラギラしたお姉さんとは程遠い。
「あ、私の名前言ってなかったですね。私、桃田Aっていいます」
ごめんなさい、知ってます。
なんなら何度も心の中で名前呼んでました。
「私のこともAって呼んでください!」
「じゃあ、Aさん」
「えー、なんか呼ばれなれないです」
俺もとしみつさんなんて、呼ばれなれないです。
「じゃあ私、ここなので!」
一緒に乗ったエレベーター。
彼女の部屋は2階らしい。
「また会った時は声かけますね!としみつさん」
「あ、はい!俺も!!」
「おやすみなさい」
「おやすみなさい」
ペコッと頭をさげて、彼女はエレベーターを降りていった。
夢じゃない、嘘じゃない、彼女がとしみつと名前を呼んだ。
自分の部屋についても、夢か現実か分からなくて
優しくドアを閉めて、優しくカバンと弁当を置いて
テレビの前に正座した。
誰かに話そうという浮かれた気分でもない。
気づいたら温めてもらった弁当も冷めていた。
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作者名:Ma | 作成日時:2018年6月4日 20時