＃27 その時は突然に。 ページ28
その時を表すなら、そう。
まるで映画のように。
その時を表すなら、そう。
まるで暗い暗い洞窟に光が指したように。
その先に、とても素敵な楽園が見えた時のように。
｢あ...｣
てつやの家での撮影を終えて、帰宅途中の俺の数歩前に、彼女がいる。
いつもは車だけど、今日は豪華な昼飯のため腹を空かせがてら歩きでてつやの家に行った自分を褒めたい。
何度も目をこすって、確認したけれど夢ではない。
紛れもない彼女だ。
今日はピョンピョン揺れるポニーテール。
まだしっかり見たことがなかった、歩き方も可愛いすぎる。
｢え？｣
俺の目の前で起きていることが夢でないのなら
とても素敵な楽園の先にもっと素敵な理想郷があった。
思わず、手に持っていたコンビニ弁当をガサッと落とした。
その時、風が吹いて、彼女がこちらを振り返った。
目が合った。目が合ってしまった。
俺はしまったと思った。
ストーカーみたいな罪悪感があったのかもしれない。
｢ん？あ！弟さん！！｣
｢あ、あの..その後ろをついてきたわけではなくて...！！｣
｢え？？｣
彼女はわけも分からなそうに首を傾げる。
｢いや、あの！そうじゃなくって！！｣
焦って余計な事言ったー...
俺は急いで弁当を拾って、ピシッと立ち直った。
｢えーっと...｣
｢もしかして、弟さんもここに？｣
｢えーっと、はい｣
そうです、そうなんです。
俺も、このアパートに住んでるんです。
｢えーっ！偶然ですね！｣
｢ぼ、僕もびっくりしちゃって！｣
同じアパートなんて、ビックリしたどころか、夢じゃないか何度も確認してました。
というか、彼女の姿が見えた瞬間、夢じゃないかって、このまま本当に天に召されるんじゃないかって思いました。
現実なのか？
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作者名：Ma
| 作成日時：2018年6月4日 20時
