シグマ ページ7
今日はバレンタインデー。女子たちの戦争。
勿論、絶賛片思い中の私も。
この天空カジノの支配人である、貴方に渡すために。
頑張らなきゃ。と思っていたけれど。
私はこの天空カジノでスタッフとして働いている。
支配人は私たちにとっては遠いはずの存在。
でも、彼はスタッフに優しく親しく接してくれる。だから、皆彼の事が好きなんだ。
私は多分、有象無象いる女の子たちの一人ではあるけれど、彼の部下になれて本当に良かったと思っている。
だから。お礼の意味も込めてチョコレヱトを渡そうと思っていたけれど。
支配人が本当に沢山の女性からチョコレヱトを、貰っているのを見て、諦めてしまった。
もう、終業時間になってしまって。清掃を終え、全ての点検をしてから、帰ろうとしたとき。
「ご苦労様だったな」
「支配人!」
「何時も点検してくれて助かる」
微笑んで云ってくれるだけで疲れが吹き飛ぶ。
「有難う」二
今なら、渡せる。二人だけだから。
「あの、受け取っていただけますか」
鞄から出して云う。
「何時もお世話になってゐるお礼に作ってきたんですけど…。朝から沢山貰っていらっしゃって
勇気が出なくて…」
小さな包みを差し出す。
「くれるのか?ありがとう」
彼は何の衒いもなく云った。
「こちらこそいつも世話になっている。」
渡せてよかった。
帰り道、思う。来年こそは恋愛の意味で渡せたら、と。
それまでは仕事を頑張って少しでもあの人のためになれたら、と。
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作者名:神無月 | 作成日時:2023年1月16日 18時