All day

今はまだ ページ16

今はまだ気付かなくて良いよ。



そう思った、深く強く。







きっとそれは、俺がAをまだ好きだから。








ライトに照らされて、踊って居る事。

撮影中で、真剣だっていう事。

何も変わらないし、何も俺らに格差なんてものはないはずなのに。




あいつの瞳は確かに光をその一瞬だけ取り入れた。




少し潤んだような、そんな瞳に映るのは、

ずっとずっと俺だけで良かったのに。




そう思ってしまう俺は、きっとワガママでしかないんだと思う。


【樹は大人だね。】



…いつか、あいつがそう言っていたっけ。


今なら言える。


樹「……そんな事、ない、」



俺は強くなかった。

自分が思ってるよりも。

周りが思ってるよりも。




強がって、大人の振りをして。



大人っぽくて冷静な人じゃなきゃ、って。



あの当時から人より大人っぽくて、どこか一歩引いていたAに、


どこか追いつきたくて。

相応しくなりたかった。



だから、少しだけ羨ましかった。



飾らなくても大人っぽい慎達が。


逆に飾らないで皆を楽しませる事ができる翔平達が。





さよならは、俺から告げたのに。


俺が、その腕を振りほどいたのに。


今更になって後悔しても仕方ないのに。


もうこれ以上、あいつを縛れなかった。





傷ついてやつれていくあいつを見るのが堪らなく怖かった。





どんな風に抱き締めたってもう濡れるだけで、

どうしようもなく辛くなるだけで。






俺には出来なかった。




全てを受け止めてそばに居るなんて。



きっと本当はあいつの方が何倍も俺より大人だったんだと思う。



最後にかける言葉さえ見つけられなかった俺には、あいつを止める資格なんてもうなかった。





………だからせめて。






誰よりも幸せに。





誰よりも、涙の少ない時間を過ごして。








そう願うからさ。


精一杯の強がりをするから。




君を傷つけた俺に、最後のワガママをさせて。




もう一度俺と君の時間が重ならないことは、もう痛いほどに分かってるから。




だから、









今だけは____________。









樹「もう少しだけ、気付かないで居て。」






俺だけが気づいた君の想いを、



もう少しだけ、しまわせて。

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