ハプニング ページ22
陸「Aさん。」
貴「え、陸くん…?」
陸「ごめんなさい、多分そのバッグ、俺ので、」
普通に言えばいいのに。
さっきまでは落ち着いていた心臓が話すたびにうるさく暴れ出す。
言葉が、上手く出てこない。
返ってかっこ悪いって。ちゃんとわかってるのに。
でも貴女はそんなこと気にする風もなくて。
貴「えええ、ほんとだ…。ごめんね、陸くん。焦ってて…。」
しどろもどろになりながら焦ったようにバッグに付けられてネームキーホルダーを見て、申し訳なさそうにしてる。
そんな姿さえ、可愛いなんて。
思わず笑みが溢れてた。
陸「ふは、全然いいっすよ。」
貴「ほんとにごめんね、もう…私のバカ…。」
陸「お陰でAさんに、会えたし。」
貴「え?」
陸「…なんもないっす。」
「あ、後それから。あいつらみたいに、俺も陸でいいんで。」
「くん、要らないです。」
貴「あ、えっと、うん。陸…?」
陸「ふふ、はい。」
どこか緊張したように呼ばれた名前が、
いつもみんなに呼ばれている名前なのに。
いつもプリントに書く名前なのに、
まるで特別になったみたいな、そんな気がした。
彼女に呼ばれたから。
そう思えるくらい、俺は好きなんだ。
陸「Aさん、俺…。」
貴「うん? あっ、」
俺が次の言葉を発しようとした瞬間、
走っていた小学生くらいの子供にぶつかられて、
彼女の身体がバランスを崩して傾いた。
酷く、ゆっくりに感じた。
気づけば身体が動いて、とっさに支えて。
気づけば地面だった。
打ちどころが良かったのか痛みはそんなに無かったし、全然平気だったけど、
陸「っ………!!!!!」
貴「……?」
暖かくて柔らかい感触が自分の唇に触れている。
それが、Aさんの唇だって。
そんな状況を理解するまでには、時間がかかった。
お互い目を見開いたままで、
数秒くらいのはずの時間が、数時間の気がした。
時が止まったみたいに、周りの音は聞こえなくて。
陸「っ、あ、Aさ、ごめんなさい、」
貴「う、ううん…私こそ、ごめんね…?」
状況を飲み込んだ瞬間焦って唇を離したけれど、
当然のように俺の顔は熱くて。
横目で彼女を見れば、彼女の頬も赤く染まって。
貴「か、帰ろっか。」
陸「はい…。」
触れた感触だけが、唇には深く残っていた。
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みんみん - 私は、光輝君オチがいいと思います。そしてこれからも頑張ってください! (2020年3月6日 17時) (レス) id: 058bebc08c (このIDを非表示/違反報告)
おもちちゃん星(プロフ) - 美空さん» お気に入り追加まで…嬉しい言葉、ありがとうございます! 遅くはなりますがこれからも丁寧に更新させて頂こうと思います。 (2019年11月12日 3時) (レス) id: 2dc1554635 (このIDを非表示/違反報告)
美空(プロフ) - この作品面白いです!お気に入り追加しました!これからも更新楽しみに待ってます!頑張ってください! (2019年9月15日 22時) (レス) id: c52258fc3c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ルーヴ | 作成日時:2019年4月4日 22時