溢れて ページ17
握り締めた携帯をずっと見つめていた。
どれくらい時間が経っただろう、無機質な時計の音だけが聞こえるように感じる。
折角今日貰えた連絡先。お昼休みに勇気を出して光輝だのなんだの言って、何言ったかは明確になんて覚えてはないけど。
君を前にすると頭が真っ白になるくらいきっと俺は溺れてるんだ。
なのに、夕方見た光景が頭にこびり付いて連絡しようとする手を止める。
光輝があの人を好きなのは知ってた。あの人が光輝に憧れてるのも。
…でも。海司の想いだけは全く知らなかった。
今日の夕方の教室。夕陽が差し込むあの時間に見た二人はあまりにも綺麗で。
いつも見慣れたはずの海司の見慣れない表情も、涙を拭われた後の A さんの表情も。
尚更だ。そう思った。
海司はどこまでも真っ直ぐだ。
すぐへらへらするし辛いとか滅多に言わないけど、それでも一途で本当は気弱で、好きな物は好きだと言える奴。
そんな海司なら正々堂々光輝に伝えるだろう。好きだ、と。
そうなれば二人の間を保たなくてはならないのは俺で、二人の気持ちを何よりも分かっててやりたい。
その為には、俺があの人に接近しすぎることも伝えることもしちゃだめだ。
そこまで考えて多分俺は逃げてるだけだよな、と息をついた。
それでも、あの人が笑顔ならその隣は俺じゃなくたっていい。
そう思えるくらい大好きになれたから。
だから。と携帯をベッドの脇に放り投げて無理矢理目を閉じた。
直ぐに視界を包む暗黒の闇。
目を閉じているから、正式には視界とは言わないんだろうか。
渦巻くような感情を吐き出そうとする自分を押さえつける自分。
幾つもの自分が交差して迷って弾けそうな感覚。
頭ではわかる理屈も心はそうもいかない。
頭には海司と光輝の笑顔が走り、
心にはあの人の純粋な笑顔が映る。
_______あの人の、運命の人は俺じゃない。
なら、俺にとってあの人は何?
いや、わからない。そんな事分かりたくもない。
分かってしまったら全て壊れてしまいそうで。
ただ、一つだけ。
たった一つ、言えることがあるとするなら
君は怖いくらいに、綺麗なんだ。
ただ、あの笑顔を守れたら。
そう思いにふけり、夢に落ちた。
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みんみん - 私は、光輝君オチがいいと思います。そしてこれからも頑張ってください! (2020年3月6日 17時) (レス) id: 058bebc08c (このIDを非表示/違反報告)
おもちちゃん星(プロフ) - 美空さん» お気に入り追加まで…嬉しい言葉、ありがとうございます! 遅くはなりますがこれからも丁寧に更新させて頂こうと思います。 (2019年11月12日 3時) (レス) id: 2dc1554635 (このIDを非表示/違反報告)
美空(プロフ) - この作品面白いです!お気に入り追加しました!これからも更新楽しみに待ってます!頑張ってください! (2019年9月15日 22時) (レス) id: c52258fc3c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ルーヴ | 作成日時:2019年4月4日 22時