白いまま溶けてⅡ【短編集】 (ページ1)

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やらかした。これはやった。いや、仕事が早く終わったと連絡しなかった私が悪いのか。それとも私がまだ帰宅しないと高を括って自慰行為をしていた彼が悪いのか。いやもうそんなのどうでもいいわ。頭をぐるぐるさせながら私はドアの前に突っ立ったまま動けない。

「ッ、ふ、はぅﾞッ…んっﾞ、♡」

彼の部屋の中から聞こえる低い声。ドキッとしてしまって足が棒になったように動かない。じんわりと頬が熱くなっている。たまに聞こえる私を呼ぶ声。服の擦れる音。荒い息遣い。見なくても分かる。彼氏の、自慰行為の現場。さすがに踏み入れるほどの気力はなくて固唾を飲むしかない。

「は、ぁﾞっ…A、Aッ♡ ____っ〜ふぅｯｯﾞ♡」

名前を呼ばれて一瞬肩が揺れてしまう。お願いだからそんな切ない声で名前を呼ばないで欲しい。ぶわりと熱が舞って頭がガンガンと警告を鳴らしている。その時だった。

ピロンっ

『っ!?』

私のスマホが、盛大に鳴った。やばい。どうしよう。その場で焦っているうちに、ドアがガチャンと開いた。目の前には頬を蒸気させて荒い息遣いをしているシャークん。どうやら理性はギリギリらしく、ズボンは履いてはいるもののボタンを留めていない。…終わった気がする。

「…いつから居たわけ。」
『つい、さっき、です。』
「…そう。仕事終わった？」
『う、ん。終わった、けど。』
「……来い。」
『へッ!?』

腕をガッ！と掴まれてそのまま彼の自室へ引きずり込まれた。ベッド脇のゴミ箱に投げられたティッシュは見なかったことにする。ベットに押し倒されて半ば強引にキスを落とされた。啄むようなキスが終わったかと思えば、唇をぺろりと舐められて心臓がバクバクと鳴る。

「ッはぁー…マジで連絡しろよバカ…。」
『ごめん、忘れ、てて、』
「…まぁむしろ都合いいわ。お前の事これで襲えるし。」
『いやいや、え!?』

さっきまで自分で慰めてもう満足したのでは…？なんて思っていると、彼が私の喉にキスを落とした。…え、喉って、

「俺、まだ全然満足してねぇけど。」
『ちょっ、私お風呂入ってないッ…！』
「別に気にしねぇよ。俺もだし。てか、スーツとかめっちゃ唆るわ。」

彼はくふくふと笑って私の頬を撫でた。彼の目は、確実に欲情していた。