触れて染まる短編集【WT】

◎離婚危機_kn ページ36

(離婚危機シリーズ)(結婚済・喧嘩表現有)

長所は短所になりやすいと、どこかで聞いたことがある。そんなことがあるのかと当時は思っていたが、今は身に染みてよくわかった。

『きんときは誰にでも優しすぎるの。誰にでも。そういう所が、大っ嫌い。』

人生で初めて、最愛の夫に大嫌いと吐き捨てた。優しいところが好きだった。そういうところが好きだった、はずなんだけど。

誰にでも優しいってことは、私じゃなくても良かったの？とか。
私以外にもそういうこと言ってるんじゃないの？とか。

あることないこと考えちゃって、結局一人で抱え込んで、爆発して、彼に当たって。最低だとは思ってる。それでも、言わずにはいられなかった。全部が苦しくて、家にいるのも、同じ空気を吸うのも辛くなって。最後の最後には泣いて。狡いとか、大人なのに情けないとかどうでもよかった。今この苦しさから解放されるなら何でも良かった。

「A、」
『きんときはモテるじゃん。私と結婚したのだって妥協だったんじゃないの？他にも、優しい子とか、たくさん、』
「A。」

ぐずぐずと泣いていたら、聞いたこともないような低い声で名前を呼ばれて体が強ばる。幻滅された？それならそれで早く、

『もう、わかれて、「やだ。」

真正面から言われた言葉に涙が止まった。それと同時に片手で頬をつままれて、半強制的に目を合わせられる。

「俺は生涯をAと過ごすって決めて結婚したの。喧嘩とか合わないことだってあるとは思うけど、一方的に、そんな簡単に別れるとか、離婚するとか言わないで。」

よく見れば、きんときの目の端にも涙が浮かんでいるように見える。そこまで引き止められるなんて、と言ってしまったら失礼かもしれないけど、まさか彼がそこまで感情的になるなんて思ってなくて。

『ご、ごめん、』
「で。なんだっけ。A以外にも素敵な子は沢山いるとかいう話だっけ？」

急に切りかえたかと思えば痛いところをつかれて目を逸らす。けど、彼がそこを逃すはずもなく。

「俺はAに惚れてるの。Aが好きで結婚したの。他の人とかどうでもいいの。いつになったら分かってくれる？」
『う、はい…。』
「ちゃんと分かるまで教えるから、ね？」

じとりと睨まれたかと思えばぎゅう、と痛い程に抱きしめられた。あぁ、これは今日寝られそうにないなぁ…。
＿＿＿＿＿＿＿＿

離婚危機シリーズはnk,br,knさんだったのでこれにて終わりですかね！(描き終わってたのに更新忘れた愚か人は私です…；；)

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