触れて染まる短編集【WT】

◎連泊_shk ページ16

(⚠︎事後表現有)
(ホテルシリーズ)

『はぁ〜……。』

自宅に帰ってすぐ、深いため息を吐いた。
昨日と同じ服を着ているのが嫌で、重い足を動かしてお風呂に入った。節々が痛いのは、気のせいだと自分に言って聞かせた。

いや、昨日の出来事はなかったことに出来ないのはわかっているんだけど。

昨日の私はそれはもう荒んでいた。仕事で面倒な役割を押し付けられて、嫌いな上司に言い寄られて、昔の彼氏から復縁を企んでるであろう気持ちの悪い連絡が来たりして。それはもう悲しいを通り越してキレていた。

だからだろうな、同期のシャークんから誘われた飲みを承諾したのは。それで酔いすぎて、手を引かれて、気付いたらホテルだった。もちろん普通のじゃない。

彼より先に起きた私は荷物をまとめて、お金とメモだけを置いてすぐさまホテルを飛び出した。スマホは、怖くて電源を切った。

『今日仕事休みでよかった〜…。』

こんな調子でシャークんと仕事なんて平静を保てという方が無理だ。普段ならもっとお酒はセーブしたのに、思ったよりシャークんに心を開いていたらしい自分に心底驚いた。

お風呂から出て、髪を乾かしていると、インターホンが鳴った。画面には、不貞腐れたような顔を浮かべている、シャークんの姿。

『…なに。』
「いやこっちのセリフなんだけど。何勝手に帰ってんだよ。」
『置き手紙したじゃん。』
「意味わかんねぇから。「昨日のことは無かったことにしよう」って何。」

いつもより低いトーンの声色に心拍数が上がる。なんでこんなに怒った表情を浮かべているんだろう。あれはきっと間違いで、私のとった行動に間違いは無いはずなのに。

「…俺がただそういうコトがしたくて誘ったと思ってんの？」
『は、？』
「Aのこと、好きだからなんだけど。」

そんなに俺、信用ない？
きゅ、と繋がれた手が、熱い。そこから熱が入ってきたかのように、じわじわと頬も熱くなってくる。

「Aは、俺のこと好きじゃない？」

そんな子犬みたいな顔して聞かないでよ。
好きだよ、って、言っちゃいそうじゃん。
＿＿＿＿＿＿＿＿

なんとなく短編の話数数えてみたんですけど、もう500超えてるんですね…はやい……これからも皆さんが楽しくご愛読して頂けるよう頑張っていきます👍❤️‍🔥

よかったら1番右のお星様、押してもらえると嬉しいです…！

◎花束_sm→←◎愛踊_br

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す