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「好きな人と話せるだけで最高だったから。まぁ、次第に俺だけに笑顔を見せて欲しい、って独占欲が芽生えちゃったから苦しくもあったけど。それでも彼女の笑顔を見る度に好きだなぁって思って、もし付き合えたらどうなるのかなー、って考えてた。だから、楽しかったよ。」
「…へぇ、意外だな。」
「いやいや、スマイルに好きな人ができたっていう事実が一番意外なんだけど。てか、こんな俺の惚気聞いて楽しい!?!俺めっちゃ恥ずいんだけど!!」
きんときは急に我に返ったのか、赤くなった顔を手で仰いでいる。…幸せそうで何より、って感じだが。
「とにかく!何があったのか知んねぇけど、後悔はすんなって話。」
「は、」
「俺だって当たって砕けろ精神で告白して、上手くいったんだよ。何もせずに終わるより、やってみた方がいいことあるかも知んないからな?分かった?」
「…まぁ。」
「俺は言ったからな!」
きんときはそう言ってその場を後にした。あの歩いて行く方向から見て、また彼女さんとご飯食べんのか。…いや、別に羨ましくなんかはない、絶対に。
俺はその場から立ち上がって帰路に着く。ふと、前から誰かが歩いてくるのが見えた。街頭に照らされたのは、
「っ、!」
『____で、_______だっ____!』
[あぁ、______、_______って__?]
杠葉さんと、彼女より幾分背の高い男性だった。思わず道の端に身を潜めてしまった俺は、何をしたいのだろうか。彼らは俺に気付くことなく横を通り過ぎていった。そこで聞こえた、彼女の言葉に俺は一瞬だけ涙腺が緩んだ。
"『まさか初恋の人と再会出来るなんて_____』"
分かっていた。知っていた。サクラソウをくれた人が好きなのだと。それが、俺では無いことも。息がとにかくしずらかった。その場で蹲り、俯いた。さすがに涙は出なかったが、涙が出そうなくらい、苦しかった。つい先日、花図鑑で見かけた紫色のクロッカスが俺の脳裏を過った。
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紫色のクロッカス・・・愛の後悔
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作者名:モチモチな餅。 | 作成日時:2022年1月2日 14時