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少し日が空いて、また花屋に行った。まだ開店時間直後だからか、人はほとんどおらず。店内を覗くと、カウンターで本を読んでいる彼女が居た。そして足元に栞が落ちているのに気がついて。
「…杠葉さん？」
『わっ、あ、あー！すみません、全然気付いてなくて…。』
「いえ。それは全然。栞、落としてましたよ。」
俺が拾った栞を渡すと、杠葉さんの目が分かりやすく揺れた。見たことない表情だった。確実に、動揺している。なんだ、またなにかしてしまったのか。俺が視線をさ迷わせていると、栞に押花が付いていることに気がついた。そういえば最近見た花図鑑に載っていたような…あ、これって、
「サクラソウ、」
『あっ、ありがとうございます!!』
「え。」
彼女は俺が言い切るか切らないかぐらいで俺の手からその栞をパッと取った。顔を見上げて、俺は固まる。
『っ、っー…。』
杠葉さんの顔が、真っ赤だったから。何かやらかしたのかと思ったが、そうでは無いらしい。どうしていいのかわからず佇んでいると、急に杠葉さんが話し出して。
『ほん、とにありがとうございます！あの、私、花の手入れしなきゃいけないので、しっ、失礼します!!!』
「ゆ、杠葉さん、」
俺が止めるまもなく、彼女はバックヤードに駆け込んでしまった。それと入れ替わりで前に彼女が言っていたであろうバイトの人が出てきた。
[店長？どうかしたのかな…あ、いらっしゃいませ。何かお求めの花はございますか？]
「…えと、サクラソウ、ありますか。」
[はい。少々お待ちください。]
なんでサクラソウを頼んだかは分からない。けど、なんだか頼まなきゃならない気がして。失われた思い出が蘇るような、そんな気がして。
[お買い上げありがとうございました。]
バイトさんに見送られて家に帰った。最近増えた花言葉の本を取り出してサクラソウのページを開く。
「…え。」
頭が真っ白になった。…そうか、そういうことか、だからあんなに顔を真っ赤にして…。
「…そりゃ、好きの人くらいいるか。」
今は、買ってきたサクラソウが恨めしく思えた。
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サクラソウ･･･初恋
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作者名：モチモチな餅。
| 作成日時：2022年1月2日 14時
