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『こちらで如何でしょうか?』
「ぉわ、」
花を眺めていると急に後ろから声をかけられて若干ビビる。彼女の手に持たれているのは紫色の小ぶりな花。紫色だった事に驚きが隠せなかった。
『此方はセントポーリア、と言って一年中花を咲かせてくれるんです。こちらはピンクか紫色を当店では扱っておりますが…どうでしょうか?』
彼女に聞かれて少し悩む。がしかし、まぁいいだろう。
「…じゃあ、これの紫色で。」
『かしこまりました。少々お待ち下さい。』
袋に包んで会計をして貰った。なんとなくこの買い物に達成感を感じたが、彼女との進展は一切無いわけで。これは如何なものかと自問自答した。
『お買い上げありがとうございました!』
「…あの。」
『はい、なんでしょうか?』
後ろを振り返って少し考えた。話しかけたのはいいが、何を聞こうかまるで考えていなかった。自分らしくない。そう思いつつ何とか捻り出した質問を彼女に投げかけた。
「あの、この店の名前のDestin、って…。」
『あぁ!Destinというのはフランス語で、「運命」という意味です。このお店に出会ってくださったのは運命だと言う意味で付けました。』
「そうなんですね…お店はお一人で経営なさっているんですか?」
『一応バイトの子が三人います。あ、私これでも店長ですので毎日元気に出勤しています!』
ふふん、と満足そうに答えてくれる店長さん。…俺と同い年っぽいのに店長なのか、凄い。そう感心しつつ彼女に感謝の意を述べ、帰路に着いた。
家に帰って早速買った植物を卓上に置いた。一気にデスクが華やかになって少し嬉しくなった。ふとセントポーリアの花言葉ってなんだろうかと気になってスマホを取り出した。その花言葉を目にして、一瞬固まった。
「…はは、こんなの調べるんじゃなかった。」
この花を見る度、顔が熱くなってしまう。
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セントポーリア・・・小さな愛
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作者名:モチモチな餅。 | 作成日時:2022年1月2日 14時