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俺の家について、彼女を家に上げた。…特に意味は無いが。思い出話でもするか、みたいな流れになったから。ただ、それだけ。
『お邪魔します…。』
「適当に座っといて。…コーヒー?」
『うん、それで大丈夫。』
彼女がニコリと笑って椅子に座った。キッチンに立って息を着く。近くの台座に俺が放置していた花図鑑が風によってパラリと捲られ、マリーゴールドのページを開いた。
「…っつ。」
熱くなった顔を冷蔵庫に入っていたお茶で冷やした。まさか、彼女が家に来るなんて。しかも、初恋の人。じわじわと染みてくる現在の状況に心拍数が上がるばかりで。ふぅ、と息をついてコーヒーを煎れた。
「ん。」
『ありがとう。』
ふわ、と部屋にコーヒーの香りが充満する。らしくもなく指が震えた。…隣にいる彼女を、まともに直視できない。
「あのさ。」
『うん?』
「…サクラソウ、まだ持ってたんだな。」
『…あ。』
俺に言われて思い出したらしい。分かりやすく彼女の頬がピンク色に染まった。当時の俺はきっと、サクラソウ=良い意味を持つ花、という漠然な思いでそれを渡した。けれど今の彼女ならその花言葉が分かっているはずで。
「その、もしかしてサクラソウの花言葉って、」
『…大人になってから、調べたの。花屋を経営しようと計画し始めて、そのキッカケになってくれたスマイルくんとの思い出を遡ってアルバムを見てたらサクラソウが押し花にされてて。花言葉を調べて…私、一人で舞い上がっちゃった。』
その栞を愛おしそうに見つめてそう話すA。
『でも、スマイルくんはもう覚えてないだろうなーって。それでも、スマイルくんが私に「花が似合う」って言ってくれたのが嬉しかったし、私の為にスノーフレークをくれたのも、本当に嬉しかったの。…だから、花屋を経営したらまた会えるんじゃないか、って。そんな思いを込めて…"Destin"って名前を付けたの。だから、こうやってまた会えて本当に良かったと思ってるよ。』
彼女はふわりと笑って俺を見つめた。心臓がきゅ、と締まる。そんな切ない顔で見ないでくれ、まるで、
全てを諦めたような顔を、しないで欲しい。
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マリーゴールド・・・変わらぬ愛
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作者名:モチモチな餅。 | 作成日時:2022年1月2日 14時