慕って染まる短編集【WT】 (ページ4)

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◎懐疑_kn ページ4

(逆浮気ドッキリシリーズ)

多分私は心のどこかで安心していた。きんときは私のことを好きでいてくれている、と。今思い返せば、最近好きって言ってくれてないような、なんて。バナーム効果だと言われればそうかもしれないけど。それでも、

『浮気するなら、見えない場所でお願いしたかったなぁ…。』

そう呟いて私は部屋に置いてある写真立てを見つめた。付き合って三年目。まさかまさかの浮気発覚。ついさっき、買い物に出たら彼氏と女の人が恋人繋ぎして喋っているのを見かけてしまった。浮気のラインは人それぞれだと思う。それでも私は、自分の知らない女の人と手を繋ぐのはもう、無理だった。…彼にとっては、それは浮気に入らないのだろうか？

『私は、無理だよ、』

重力に従って涙が落ちる。このままお別れなのかな。それとも、私が気付いてないと思ってるのかな。…どうしたら、いいのかな。そんなことを考えていると、玄関からガチャンという音と同時にきんときの「ただいま。」という声が聞こえた。慌てて頬を拭ってキッチンに向かった。

「あれ、ご飯作ってるの？」
『…うん！今日はロールキャベツにしようかなぁって。』
「…A？」

なるべくきんときの方を向かないように、見ないように。そうしていたのがどうやら逆に彼に不信感を抱かせてしまったようだ。後ろに彼が立つのが分かった。

「大丈夫？目、赤くない？」
『そん、な、事ないよ。』

震える声を隠しながら冷蔵庫の中身を見つめる。後ろから手が伸びてきて、その扉は閉められた。心臓がきゅ、となる。

「ねぇお願い、何かしたなら謝るから、」
『……てて、』
「え、？」
『もう私が嫌なら、捨てて。』
「……は？」

思ったことを呟けば恐ろしいほど低音の声が返ってきた。あまりの恐怖で固まってしまう。

「何、捨てて、って。」
『きんとき浮気してるんでしょ？私は要らないんでしょ？』

だからお願い、捨てて。

「ねぇ、何言ってるの？」