検索窓
今日:7 hit、昨日:95 hit、合計:281,427 hit

◎家族_kr ページ12

(出産・子育てシリーズ)
(惚れて染まる短編集【WT】の旦那、過保護中_krから少しあとの話)

それは突然だった。

『……やん、ちょっと、』
「どした?…って、え?!!」

きりやんの絶叫がやたら頭に響いた。それもそうだ。私の顔は絶対に今、真っ青だ。陣痛が来ていたのだが、まさかまさかの破水したのだ。そこからは怒涛のスピード感だった。彼の運転で病院に連れていかれ、検査を受けて。出産が近いということで分娩室に入った。おどおどしていたきりやんもお医者さんに促され、そのまま一緒に入った。

お腹、というか下腹部が痛すぎて血管が切れそうだった。たまに「出産の痛みは鼻からスイカを出すレベル」なんて聞くが、本当にそうだと思った。隣に座っている彼の手を握るけど手汗が酷い。

「A、A…っ、」
『やん、大丈夫だから。大丈夫、』

彼の目がぐらぐらと揺れていて、相当不安なのが分かる。けれどなにか思い直したのか、空いている手で私の頭を撫でてくれた。

「頑張れ。頑張って…!」
『うんっ、がんばる、から、』

そろそろかもしれない、と言うので助産師さんの声とともに息を整える。とにかく息をすることに集中して、全身全霊で頑張った。その後、病室に響いたのは、

「おぎゃぁ、おぎゃ、」
[おめでとうございます。元気な女の子ですよ。]
『は、はへ…。』
「ふへ、」

きりやんも私も、同時に息をついた。生まれた、らしい。こういう言い方は許して欲しい。実感がまるでないのだ。そのままお医者さんに抱っこしていいですよ、と言われて我が子を抱き抱える。

『わぁ、小さいね…。』

スースー、と寝る子どもにくすりと笑みがこぼれた。ふときりやんの方に視線を向けると、少しばかり緊張した顔をしている。

『…抱っこする?』
「ぁえ?し、していいの?」
『そりゃあ我が子ですから。』

本当に、恐る恐るという言葉がピッタリな形で彼は赤ちゃんを抱き上げた。きっと初めての経験でどうしたらいいか分からないんだろう。つい、笑ってしまった。

「待って、ねぇ待って、小さすぎて壊しちゃいそう、」
『大丈夫だよ。…きっときりやんに似て丈夫な子に育つよ。』

私がそう言うと、彼は泣きそうな顔をしてくしゃりと笑った。

◇→←◎下戸、介抱(求)_kn



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (366 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
957人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:モチモチな餅。 | 作成日時:2021年12月17日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。