◎家族_kr ページ12
(出産・子育てシリーズ)
(惚れて染まる短編集【WT】の旦那、過保護中_krから少しあとの話)
それは突然だった。
『……やん、ちょっと、』
「どした?…って、え?!!」
きりやんの絶叫がやたら頭に響いた。それもそうだ。私の顔は絶対に今、真っ青だ。陣痛が来ていたのだが、まさかまさかの破水したのだ。そこからは怒涛のスピード感だった。彼の運転で病院に連れていかれ、検査を受けて。出産が近いということで分娩室に入った。おどおどしていたきりやんもお医者さんに促され、そのまま一緒に入った。
お腹、というか下腹部が痛すぎて血管が切れそうだった。たまに「出産の痛みは鼻からスイカを出すレベル」なんて聞くが、本当にそうだと思った。隣に座っている彼の手を握るけど手汗が酷い。
「A、A…っ、」
『やん、大丈夫だから。大丈夫、』
彼の目がぐらぐらと揺れていて、相当不安なのが分かる。けれどなにか思い直したのか、空いている手で私の頭を撫でてくれた。
「頑張れ。頑張って…!」
『うんっ、がんばる、から、』
そろそろかもしれない、と言うので助産師さんの声とともに息を整える。とにかく息をすることに集中して、全身全霊で頑張った。その後、病室に響いたのは、
「おぎゃぁ、おぎゃ、」
[おめでとうございます。元気な女の子ですよ。]
『は、はへ…。』
「ふへ、」
きりやんも私も、同時に息をついた。生まれた、らしい。こういう言い方は許して欲しい。実感がまるでないのだ。そのままお医者さんに抱っこしていいですよ、と言われて我が子を抱き抱える。
『わぁ、小さいね…。』
スースー、と寝る子どもにくすりと笑みがこぼれた。ふときりやんの方に視線を向けると、少しばかり緊張した顔をしている。
『…抱っこする?』
「ぁえ?し、していいの?」
『そりゃあ我が子ですから。』
本当に、恐る恐るという言葉がピッタリな形で彼は赤ちゃんを抱き上げた。きっと初めての経験でどうしたらいいか分からないんだろう。つい、笑ってしまった。
「待って、ねぇ待って、小さすぎて壊しちゃいそう、」
『大丈夫だよ。…きっときりやんに似て丈夫な子に育つよ。』
私がそう言うと、彼は泣きそうな顔をしてくしゃりと笑った。
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作者名:モチモチな餅。 | 作成日時:2021年12月17日 20時