溺れて染まる短編集【WT】 (ページ19)

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◎誤解_kr ページ19

(逆浮気ドッキリシリーズ)

その日は運が悪かったというかなんと言うか。取り敢えず、全てにおいてついてなかった。朝は寝坊しちゃって、朝食はまともに食べられなかった。会社に行ったら行ったで苦手な同僚にエンカウント。夕方に定時で上がろうとしたら増えた仕事によって残業確定で詰み。

そして極めつけは、疲労困憊中の帰り道に彼氏が女の人に抱きつかれているのを見てしまった。もうダメだった。

『あﾞ〜…最っっ悪。』

あの後すぐに私は家まで走り、玄関のドアを閉めてズルズルと座り込んだ。パンプスで走ったおかげで息遣いが荒い。走っただけが理由かは分からないけど。

『…ついて、ないなぁ。』

ポロリと零れた言葉を拾う人なんていなくて。しんどさと辛さで目眩がした。そんな私の耳に飛び込んできたインターホンの音。立ち上がる気力もなくてそのままにしていると、ドアがノックされた。微かに、声も聞こえる。

「___!?____でしょ？__れ_____から！」

…これは多分、きりやんの声。なんだ、なんなんだ。ついさっきまで綺麗な女の人と浮気してたくせに。そりゃそうですよね、社畜で化粧とかままならない私よりずーっと、綺麗な人でしたもんね。そっちに行けばいいよなんて、ひねくれた事を考える。すると、ふわりと体が浮いて。

「合鍵持っててよかった…って、はぁ!? こんなとこ座って何し、じゃなくて！ほら、立って？このままだと風邪引く、」
『…るさい。』
「え？」

キョトンとするきりやんをよそに、私は思いの丈を吐き出した。

『う、るさい。もうやだ。今日一日、しんどかった。なのに、きりやん浮気してるの見て、もう無理、やだ。来ないで。』

語彙力無さすぎるだろ、と自分でも思った。けど、今の私にはこれくらいしか言える言葉がなかったのだ。そのまま立っていると、彼が私の手を取った。

「言い訳に聞こえるかも知んないけど俺、浮気してたんじゃなくて、あの人が転びそうになったのを支えただけ…Aが、見たの気付いて、このままだとダメだと思って追いかけた。傷つけて、ごめん。」

『…ほんと？』

「なんなら今ここでスマホとか見ていいよ。」

『…んーん、信じる。』

「そっか。…家上がってい？」

『汚いよ。』

「今日は俺にお世話されてよ。ね？」

そうやって優しく微笑まれてしまえば、抗うことなんて決して無理な話だった。

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お題箱から頂きました、浮気ドッキリ(的な)の逆バージョンです。