◎楽天的鈍感_kr ページ13
(両片思いシリーズ)
…距離、近いなぁ。
そうやって悶々と考えるけど、私が口出ししていいものじゃない、と思って口を固く結んだ。
今日は会社の飲み会。既に出来上がってる人は何名かいて、ほぼ地獄絵図と同義だった。私はお酒が強くないのでちみちみと烏龍茶を啜っていた。
視線をずらすと目に映るのはお姉様方に言い寄られている同期のきりやんで。中学が同じだっただけあってそれなりに仲は良い方だった。そして彼は昔も今もよくモテるようで。
((こういう時、私の彼氏なんで!とか言える立場だったらな〜…。))
一人で勝手に有り得ない妄想をして自嘲した。烏龍茶を机に置くと、彼と目が合った。少し眉を寄せてチラリとお姉様方を見る。…あぁ、あの目は助けを求めている目だ。でも私だってお姉様方の反感は買いたくないし、そもそも彼女ですらないし。私の出る幕無いでしょ、という意味も込めて肩を竦めて目線をずらした。
すると、横から見た事のある影が。
[Aさん、楽しんでる?]
『…あぁ先輩。本日もお疲れ様です。』
[うん、そっちもお疲れ様。]
話しかけてきたのは直属の先輩で。この人苦手なんだけどな…なんて考える。まぁ人付き合いなんて避けては通れない道。適当に相槌を打っていると、先輩の手が私の手に伸びてきた。
[あれ、もしかしてお酒飲んでないの?]
『…えぇまぁ。』
凄い、嫌な予感がする。
[飲みなよ〜。せっかくだし、ね?ほら、僕のあげるから。]
いやいや、貴方が飲んだお酒ですよね?絶ッ対嫌なんだが?自意識過剰ですか乙です。…なーんて言えるはずもなく、やんわりと断る。それでもしつこい彼の元へやってきた救世主は。
「A、そろそろ時間じゃないの?」
『…え?』
きりやんと目が合って思わず固まった。え、何?時間って?理解出来ていない私を横目に私の手を引いて彼は先輩に向かって言葉を吐いた。
「すみません、俺、彼女と用があるのでこれで。」
そのまま机に一万円を置いて私と彼は店を出た。…へぇ、こんな漫画みたいなことが起こるのか、なんて感心してしまう。
「あ゙〜ッ、本当に最悪…近いんだよマジで。」
『ちょ、きりやんどうしたの?』
「え?イライラにイライラが積み重なってこうなった。…ちょっと俺の家で飲み直さね?」
『賛成。』
モヤモヤしていた心が、今となってはスッキリしている。それもこれも全部、彼のせいなんだろうけども。
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両片想いシリーズ、開始です。
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作者名:モチモチな餅。 | 作成日時:2021年11月24日 22時