◎慕頼_shk ページ10
(リクエスト!!)
ホテルの部屋にあるテレビを見つめる。これをしてから果たして何時間が経ったのか。友人に誘われて着いてきた旅行。…彼女を置いてきたことを、酷く後悔した。いや、置いてきたというか、置いていかざるを得なかった訳だが。
ちょうど旅行の日、Aの仕事と丸かぶりしてしまったのだ。しかもよりによって北と南で真反対。俺の方はめちゃくちゃ寒いが、あちらはそこまでではないらしい。
つまんねぇなぁ、なんて思っていると電話が鳴った。表示されているのは彼女の名前で。お互い電話なんて片手で数える程しかしたことが無いから驚いた。
「…もしもし。」
"『あ、シャークん！ まだ起きてたんだ、良かったぁ。』"
「時計見ろよ。良い子でもまだ寝る時間じゃねぇよ。」
"『それもそうだね。』"
電話の奥の方でケラケラと笑うAはいつも通りのようで少しばかり悔しくなった。つまらないと感じているのは、まるで自分だけのような気がして。
「てか急だな、Aから電話とか。なんかあった？」
"『え〜？ 用事なきゃ電話しちゃダメ？』"
「いや、そうじゃないけどさ…珍しいから。」
俺がそう言うと、彼女はしばらくの間黙りこくった。なんか変なことでも言ったか…？ と自分の言動を振り返っていると、電話口から少しだけ小さい声が聞こえた。
"『シャークんの声が聞きたかった…って理由で電話したら、いけなかった？』"
「っ、」
Aの言葉で心臓がきゅ、と締まった。あー…やっぱり連れてくればよかった。後悔だけがやたらと募る。
「悪くない、悪くないから。…今度、は、一緒に来ような。」
"『えっ、いいの！ ほんと!?』"
「うん。最近お互い忙しくて二人で出かけたりとか出来なかっただろ。」
"『確かにそうだけど…えぇ、そしたら京都とかは？ あ、でも一緒にスノボでも良くない!?』"
「ふは、はしゃぎすぎだっつの。とにかく今は仕事頑張れよ。」
"『うん！ 頑張る!!』"
彼女は張り切ってそう言うと電話を切った。今度は二人でどこに行こうか。
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慕頼_ぼらい
･･･慕って頼りとすること。
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作者名：モチモチな餅。
| 作成日時：2022年2月13日 22時
