想って染まる短編集【WT】 (ページ46)

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◎初見参_nkm ページ46

(リクエスト!!)

なかむと初めて出会ったのは______私が働いていた喫茶店に彼が来たからだった。

聞きなれた入店音に反射的に顔を上げ、すぐにメニューを持ってドアの前まで走った。そこに立っていたのはすらりとした姿勢に少し長めの茶髪の人。彼は私を見るなりピタリと止まって動かなかった。けれど私はそんなことに気が付いてなくて。

『いらっしゃいませ、お一人様でしょうか？』
「…。」
『え、お客様…？』
「あっ、はい！一人です!!」

もう一回声をかけると彼はパッと顔を明るくして返答してくれた。そのまま席へ案内してメニューを差し出す。レジに戻って他のお客様の対応をしていると、彼の席がちらりと視界に入った。レジからはちょうど彼が見えるのだ。

((…誰か、探してる？))

会計の対応を終えて彼を見ると明らかにキョロキョロと顔を動かしていた。外を、と言うより店内を探していた。レジから離れて彼の席の前を通りかかるとすみません、と声をかけられて。

『はい、ご注文お決まりですか？』
「えっと…このタルト、ください。」

彼が指さしたのはカラフルな苺が乗っているタルトだった。まぁちょうどおやつの時間だし甘いものが食べたいのかな、なんて思いながら私は注文を受けた。そしてその場を去ろうとした____のだけれど。

「あ、あのすみません！」
『はいっ、どうかされましたか…？』

私が振り返ると彼は2、3回程口を開閉した後踏ん切りがついたように目を見て言葉を吐いた。

「お名前、聞きたいんですけど、」
『…はい？』

一瞬、本気で幻聴だと思った。だっていきなり名前聞かれるなんて思ってなかったから。私がポカンとしていると彼はかァっと頬を染めて顔を逸らしてしまった。

「すみません、訳わかんないですよね！ほんと、すみません…。」
『あっ、いや、ちょっと驚いただけですので…。』

その場でとりあえず名字を告げて立ち去ったわけだけど。それから彼がこの店に通いつめてきて付き合うことになったのはこの事気の私たちはまるで予想していなかったのだ。
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初見参_ういけんざん
･･･初めてお目にかかること。初対面。

お久しぶりです。またこれからポチポチ更新していきますˊᵕˋ♡