◎懐想_kn ページ42
(リクエスト!!)
「…はっくしゅ、」
だだっ広い公園のベンチで、一人でくしゃみをする。いつもだったら隣に座っている彼女が笑いながら心配してくれるのだけど。
「ぅ〜…やっぱり連れてくればよかった。」
一人旅行してみたいと思ってした訳だけど…するもんじゃないな。そう考えてポケットからスマホを取り出した。彼女とのトーク履歴を読み返しては項垂れる。…うん、寂しい。そう思った俺は、気付けば電話のボタンを押していた。
"『ん、はいはい。Aですよ〜。』"
「あれ、もしかしてなんかしてた?」
"『ちょっと洗い物してただけだよ。どしたの?』"
数日ぶりに聞こえてきたAの優しい声。それにつられて俺の声のトーンが上がるのが分かった。なんだか少しだけ恥ずかしい。
「なんか…ちょっと声聞きたくて。」
"『え〜? きんときがそんな事言うなんて珍しいじゃん。』"
「そうかなぁ、てか恥ずかしいからやめてよ!」
そんな軽口を叩きながら彼女と最近の話をする。今日の朝ご飯はビュッフェだったとか、最近は花粉が凄くて辛いとか。そんな事を言えば言うほど寂しさが募る。
"『…ん? きんとき?』"
「あ、え、何?」
"『いや、今明らかにテンション下がったからどうしたのかなー、って。』"
Aにそう言われて口を噤む。そんな分かりやすかったかな、俺…。でもまぁテンション下がったのに変わりはないし、早く帰りたいなとか何とか考えてしまっている。
「いや、ちょっと帰る便早めよっかなって。」
"『え!? なんでよ、もっとゆっくりしてきなって。』"
「Aは俺が早く帰ってくるのは嫌?」
ちょっと意地悪のつもりでそう聞いてみる。電話口がいきなり静かになってニコニコが止まらない。照れてるのかな、それともすごく考えてる? でも俺のことを考えているのに変わりはない。それが嬉しくてつい頬が緩む。
"『……その、早めに帰ってきてくれたら、嬉しいなぁ。』"
「ん゙ッッッ、」
分かりやすく照れた声色になった彼女が可愛くて可愛くて。俺はその場で蹲る他なかった。
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懐想_かいそう
・・・思いを持つこと。または、思い慕うこと。
これにて遠距離(旅行)シリーズ終了です。
花粉症で鼻が終わってるので更新が遅くなります(え?) 皆様、花粉は大丈夫ですか? 薬飲みましょうか…
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作者名:モチモチな餅。 | 作成日時:2022年2月13日 22時