検索窓
今日:18 hit、昨日:62 hit、合計:207,322 hit

◎懐想_kn ページ42

(リクエスト!!)

「…はっくしゅ、」

だだっ広い公園のベンチで、一人でくしゃみをする。いつもだったら隣に座っている彼女が笑いながら心配してくれるのだけど。

「ぅ〜…やっぱり連れてくればよかった。」

一人旅行してみたいと思ってした訳だけど…するもんじゃないな。そう考えてポケットからスマホを取り出した。彼女とのトーク履歴を読み返しては項垂れる。…うん、寂しい。そう思った俺は、気付けば電話のボタンを押していた。

"『ん、はいはい。Aですよ〜。』"
「あれ、もしかしてなんかしてた?」
"『ちょっと洗い物してただけだよ。どしたの?』"

数日ぶりに聞こえてきたAの優しい声。それにつられて俺の声のトーンが上がるのが分かった。なんだか少しだけ恥ずかしい。

「なんか…ちょっと声聞きたくて。」
"『え〜? きんときがそんな事言うなんて珍しいじゃん。』"
「そうかなぁ、てか恥ずかしいからやめてよ!」

そんな軽口を叩きながら彼女と最近の話をする。今日の朝ご飯はビュッフェだったとか、最近は花粉が凄くて辛いとか。そんな事を言えば言うほど寂しさが募る。

"『…ん? きんとき?』"
「あ、え、何?」
"『いや、今明らかにテンション下がったからどうしたのかなー、って。』"

Aにそう言われて口を噤む。そんな分かりやすかったかな、俺…。でもまぁテンション下がったのに変わりはないし、早く帰りたいなとか何とか考えてしまっている。

「いや、ちょっと帰る便早めよっかなって。」
"『え!? なんでよ、もっとゆっくりしてきなって。』"
「Aは俺が早く帰ってくるのは嫌?」

ちょっと意地悪のつもりでそう聞いてみる。電話口がいきなり静かになってニコニコが止まらない。照れてるのかな、それともすごく考えてる? でも俺のことを考えているのに変わりはない。それが嬉しくてつい頬が緩む。


"『……その、早めに帰ってきてくれたら、嬉しいなぁ。』"
「ん゙ッッッ、」

分かりやすく照れた声色になった彼女が可愛くて可愛くて。俺はその場で蹲る他なかった。
______________________

懐想_かいそう
・・・思いを持つこと。または、思い慕うこと。

これにて遠距離(旅行)シリーズ終了です。

花粉症で鼻が終わってるので更新が遅くなります(え?) 皆様、花粉は大丈夫ですか? 薬飲みましょうか…

◎同窓会_sm→←◎初見_br



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (398 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1094人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:モチモチな餅。 | 作成日時:2022年2月13日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。