名前のない物語2

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おそるおそる入ってきたAさん
急いで来た、とか、仕事なくて良かった、とか言って
俺とご飯食べるの楽しみにしてくれたの？
…そう考えてもいいの？

最初はいつもみたいな会話
当たり障りのない会話

でも気づけば、今日は…、から、普段何してるの？休みの日は？
とかそんな会話をお互いなんとなくしてて

明らかに今までのAさんじゃない

…それは俺にも当てはまることなんだけど



「あ…時間結構経ってましたね…。岳さん今日は？ホテルちゃんととってるんですか？」

『これから帰ります』

「え？これから？大丈夫ですか？」

『大丈夫ですよ、初めてじゃないので』

「すいません。もう少し早く気づけば良かった。帰る時間夜中になっちゃいますね……」

『楽しかったからしょうがないです』

「え？」

『俺…時間忘れてました。今言われるまで』

「……」

『久しぶりにご飯食べながらゆっくりしました。楽しかったです』

「私も…今日楽しかったです」

『また…よければ……ご飯行きませんか？』

「えっと…。いいんですか？」

『…なんかダメなんですか？』

「いや、そんなことは…！…サッカー選手って…毎日ずっと練習でしょ？忙しくて大変じゃないですか…？」

『…1日中練習してるわけじゃないですよ？』

「え？そうなんですか？」

『だいたい午前中だけとかです。たまに1日の時もありますけど。俺はAさんのほうが忙しいと思いますけどね』

「私は…周りの多くの人が関わってる仕事は…まあ。でも基本話し合ったり創ったり…毎日じゃないですから」

『じゃあ…またお願いします』

「迷惑じゃなければ…ぜひ」



店を出るときに、別々に支払おうとAさんがしてたから、誘ったのは俺だし払うって言ってるのにAさんは譲らなくて
払う、いい
の応酬

頑固すぎてらちが明かないから強引に俺が払って
電車で来たというAさんは駅まで歩くって言うから、店の前で別れた

2016.4 ◎&○→←◎

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