見えなくても（黄） (ページ30)

今日:2 hit、昨日:1 hit、合計:75,711 hit

30 ページ30

一人にさせてほしい、

その言葉の通り、俺は、病室を出た。

向かった先は喫煙所。

煙草、久しぶりやな。

ずっと吸ってへんかったから。

自分で作った煙を眺めながら思った。

今、Aはどんな思いなんやろうって。

何を考えているんやろう。

俺が、どんなにAの気持ちを考えようとしてたって

そりゃ、分かるはずもない。

考えれば考えるほど、苦しくなって

こんなにも俺らの人生が狂ってしまったのはなんでだって

そんなことしか考えられなくなる。

二人の笑顔なんて、もうとっくの昔に消えている。

上辺だけの笑顔なんて、苦しいだけやのに。

笑い方も、なんなら泣き方も全部

わからんくなっていた。

Aの精神が安定しない大きな理由の

目が見えへんってこと。

ずっとどうにかならないかって考えた。

目さえ見えるようになればまた幸せが

前より倍になって幸せが付いてくる。

でも、何度手術を繰り返したって治らへん。

視力が回復することなんて、ほぼないんや。

やから、俺の中でもう、手術をするなんて手段は残っていない。

とにかく今は、結婚をして、子供作って

そんな、ふたり同じ夢を叶えることが

幸せになることなんや。

はよ、答え出してくれへんかな。