08.上下関係意識 ページ10
練習までまだ時間があったのと、先輩の手伝いをしなくちゃ!という元運動部の上下関係意識がはたらき、Aは潔子について行き準備の手伝いをしていた。
「Aちゃん、手際いいね。もしかしてマネージャーの経験ある?」
『実は中学の時バレー部で…。マネージャーがいなかったから下級生が率先して色々やってたので、こういうのは少し慣れてるんです』
「バレー経験者なんだ。もし入部となれば、皆んなにとっても私にとっても頼もしい存在になるね」
『そんな…!とんでもないです…』
美人でしっかりしていそうな雰囲気があり良い意味で1年生らしくないという印象を持っていたが、慌てて謙遜する様子がなんともフレッシュで可愛らしく、潔子は思わずクスッと笑った。
それから、Aが元セッターだということや、日向の話を聞いたり久しぶりにボールに触れたりしてまたバレーに関わってみたいと思えたことを話し、潔子は元陸上部だということや、烏野バレー部が''落ちた強豪、飛べないカラス''と呼ばれながらも真剣に全国を目指しているということを話し、二人の仲が深まった。
Aの人見知りも少しずつ解け、次第に表情が柔らかくなっていった。
同性で話しやすい先輩が出来たのが嬉しくて、Aの口角が自然と上がる。
「そろそろ練習始まってる頃だし戻ろっか」
『はい。あ、それ持ちます!』
「ふふっ、じゃあこっちお願いしても良い?」
『はい!』
二人が別室から戻ってきた頃、部員たちはフライングの練習をしていた。
懐かしい気持ちになったAの瞳が輝いたのを見て潔子は優しく微笑んだ。
・
なんだかんだであっという間に片付けの時間になった。
座ってて良いよと言われたもののやはり上下関係意識が働きAも手伝う。
「けっ!な〜んか気に入らねーんスよ、あの新一年」
「お前、初対面の奴大体気に入らないじゃん。アレだろ?そういう習性だろ?」
「習性って…」
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作者名:花雪 | 作成日時:2024年3月13日 22時