07.見学 ページ9
見学についてAはボーッと考える。
側から見ると真面目に授業を受けているように見えるが、実はそんなに教師の話を聞いていない。
人見知り期に周りからクールな印象を抱かれるのは、こういう時には便利である。
・
そんなこんなであっという間に放課後になり、Aが席から立ち上がるとまた日向が駆け寄ってきた。
「決めた?!決めた?!」
『見学、行ってみようかな。プレーするのも楽しいけど、外から人がプレーしてるところ見るのも、その人たちを支えるのも良いなと思って。日向くんもすごく頑張ってるし…』
日向がパッと目を輝かせAの両手を取りぶんぶんと振りながら「すげえ心強い!!よろしくな!神崎さん!!」と歓喜していると「まだ入ると決めたわけじゃないべ」と菅原が入ってきた。
「1年の教室久々!懐かし〜」
「菅原さん!」
「前向きに考えてくれてありがとな、神崎さん」
『あ、いえ…』
「もう体育館行ける?」
『はい』
「じゃあ一緒に行こっか」
「俺も!俺も一緒に!」
「日向は出禁だからなあ」
「くっそーー!」
「神崎さん、行こう」
『あ、はい。日向くん、また明日…?』
「また明日!見学の感想とか聞かせて!!」
菅原とAが教室を出たあと、1年1組の教室内は少々騒ついた。
((あの3年の先輩カッコよくない?、神崎さんと並んでも絵になるよね、美男美女だ……))
・
「神崎さん、本当に良かったの?なんか強引に誘った感じになっちゃってない?」
『全然そんなことないです…!寧ろありがたいです。部活とか何も決めてなかったし、バレー好きですし…』
「なら良かったべ!」
ニッと笑って菅原が体育館の扉を開くと、運動部特有の挨拶がぽつらぽつらと降ってくる。
中に入ると一気に視線が集まり、Aは肩を小さくびくつかせた。
「あー!!昨日の!!」
田中が大声でそう叫んだ時、ちょうど潔子が体育館へ入ってきた。
「あ!清水!この子1年でさ、見学に来てくれたぞ」
「マネージャー志望?」
『あっ、はい。神崎Aといいます。よろしくお願いします』
挨拶すると潔子の表情がぱっと明るくなり、Aは思わず見惚れる。
『(綺麗な先輩だなあ)』
「3年の清水潔子です。Aちゃん、今日はゆっくり見学してってね」
『は、はい…!』
「(Aちゃん、可愛い…)」
田中が「美女の会話!!眼福ッ!!!」と騒ぎ散らし澤村に叱られたのは言うまでもない。
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作者名:花雪 | 作成日時:2024年3月13日 22時