06.勧誘 ページ8
「菅原さん!!」
一旦パス練を止めて日向が駆け寄ると、菅原は爽やかにニカッと笑う。
「おっす日向。と、君は昨日の……バレー出来るの?」
『あ、はい。中学の時やってて……』
「俺は男バレの副主将やってる菅原孝支!確か、神崎さんだったよね?…ごめん下の名前って何?」
『Aです。神崎A』
「…ん?……ああ!!神崎A!!!」
突然フルネームを叫ばれびくりとするAと、「え!なになに?」とソワソワする日向。
ちょうど自販機へ牛乳を買いに来ていた影山も思わずその場にとどまる。
「東京の中学通ってた?」
『は、はい。中2まで東京にいました。……あの、菅原先輩は私のこと知ってるんですか?』
「全国優勝した時テレビに映って、月バリにも何度か出てたよね?それでなんとなく見覚えあってさ、…あ〜、そうか。あの神崎Aか!」
「神崎さんすげー!!そんな強い人だったのかよ!!」
『そんなことないよ…』
Aが謙遜すると、菅原が「またまたあ」と笑う。
「もうバレーやんないの?そんなに強かったら推薦とか来ててもおかしくないと思うけど」
『バレー、中2でやめたんです。全国優勝して自分の中でキリが良かったのと、こっちに引っ越してきてからは受験もあるし部活に入らなかったから特に推薦もなくて…』
「高校はどうすんだ?あ!軽音部?」
『軽音部は無いかな…兄貴がうるさくて』
ふふっ、と再び昨日のように笑い、日向も菅原も目を奪われる。
なかなかに心臓に悪い笑顔だ。
『でも、日向くんの話聞いて一緒にパス練してたらやっぱりバレー好きだなって思ったよ』
「ほんとか?!女バレ入る?それともマネージャー?!」
「男バレのマネだと清水が喜ぶなあ」
『清水…さん?』
「うちの3年マネなんだけど、一人だからさ、今年1年生が入ってくれるとすごい助かると思うんだけど…」
『…マネージャーかあ……』
「お!興味ある?」
その時ちょうど予鈴が鳴り響き、三人と隠れて会話を聞いていた影山はハッとする。
「神崎さん、もしよかったらさ、見学だけでもおいでよ!放課後いつでも大丈夫だから!」
校舎内に入り3年の教室の方へ向かう前に菅原がそう言った。
「おー!いいじゃん!見学!」
『か、考えてみます…』
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作者名:花雪 | 作成日時:2024年3月13日 22時