38.烏野 ページ41
「「友よ、また会おう!」」
帰り際、すっかり意気投合した田中と山本が泣きながら握手をしている。
片付け中に潔子やAの話で盛り上がっていたらしい。
主将同士・コーチ同士はというと怖すぎる握手をしていて、オカンズがヒヤヒヤとしている。
「研磨!この前道で会った時、特別バレー好きじゃないって言ってたよな」
「あ…うん…」
「今日は?勝ってどう思った?」
「別に…普通…かなぁ…」
「次は絶対必死にさせて…俺達が勝って…そんで…… 悔しかったとか!楽しかったとか!''別に''以外の事言わせるからな!」
「うん。じゃあ期待しとく」
日向と研磨のやりとりを静かに見守っていると、黒尾が隣に来て「Aチャンもさ、帰る前に一回''研磨''って呼んであげなよ。アイツ喜ぶぞ」と言う。
『でも……』
「研磨ァ!そろそろ行くぞ!」
そう声をかけコチラへ研磨が来るようにして、ニヤニヤしながらAを見てくる。
研磨が珍しく女子と接しているのが新鮮で仕方ないのだろう。
黒尾の顔に''ほら、呼んじゃえよ''と書いてあるのと、研磨本人からもじっと見つめられているという状況に耐えられず、少し目線を下にやりいつもよりボリュームの小さい声でこう言った。
『……け、研磨、またね…』
「…!」
((か、かわっ………!!!))
研磨は一瞬目を丸くして「敬語なし、出来るじゃん」と言い、周りの者たちは胸をハートの矢で射抜かれ悶えている。
タイミングよく騒々しさがなくなりAの言葉が皆んなに丸聞こえになってしまっていた。
頬を赤く染め、ぺこりと一礼してから颯爽と烏野の面々の方へと走る姿はドラマのワンシーンのようだ。
田中や西谷は「ずりぃなアイツ!俺らは下の名前で呼んでもらったことなんかないぞ!しかも呼び捨てかよ!」「でもアレだ。先輩呼びも堪んねえからな!!」と騒ぐ。
澤村は「大丈夫か?今日はただでさえ初対面のヤツまみれだったのに、絡まれまくってすげー体力消耗したんじゃないか?」と心配してくれ、菅原は「ほら、糖分摂取!」とバッグから飴玉を取り出して渡してくれた。
『やっぱり烏野っていいですね。落ち着きます』
最初は人見知りしていたものの、かなり慣れてきて素でいてくれるようになり、他校の人間と接した後にそんなことを言ってくれ、皆顔を見合わせ喜んだ。
190人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:花雪 | 作成日時:2024年3月13日 22時