37.体育会系 ページ40
夕方になり、講評等を終えて片付けの時間となった。
Aがスクイズボトルを洗い終わり体育館へ戻ると、影山があの呪文のような早口を呟きながら研磨をロックオンしていたので「影山くん、一旦落ち着け?」と割り込んだ。
自身もロックオンされたことがありオロオロした覚えがあるのと、研磨もそういうのめっちゃ苦手な人そうだと思い、なんとなく放っておけなかった。
「神崎さん!すみません!」
「私に謝んなくていいよ」
「ウス!」
まるで先輩と後輩だ。
影山が離れたタイミングで研磨が「ありがと」と言いに来た。
猫のような目が青空のような瞳を捉える。
『あ、いえ…失礼しました』
急に無表情になったのを見て、中学の試合中のクールな彼女と重なる。
そしてなんとなく自分と通づるものがあるように感じ「敬語いらない」と言った。
『え、でも……孤爪さん…って、2年生ですよね?』
「そうだけど、いらない。そういう体育会系の上下関係みたいなの、嫌いだから。呼び方も研磨でいい」
『……無理、です』
少し考えたが、上下関係を重んじる部活出身のAにはなかなか難しい。
研磨がムッとした顔でいると「あらあら〜?研磨クン、女の子と話してるのなんて珍しいねえ〜」と黒尾が肩に腕を回してきた。
「うるさい、クロ。この子クールとかじゃないよ、体育会系に染まってるよ」
「まァ、あの清風館だもんな。1軍入って副主将やってても下っ端仕事して先輩のこと立ててたもんな」
「もう清風館じゃないんだから、そんなことする必要ない」
「頼む、Aチャン。研磨が自分から他人と仲良くしようとするなんて珍しいからさ」
『……じゃあ、頑張ります』
黒尾からの圧が凄かったのと、A自身も研磨に対し自分と近いものを感じていて、これも人見知りをなおす一歩だと思いそう答えた。
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作者名:花雪 | 作成日時:2024年3月13日 22時