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35.予想外 ページ38

「女っ…マネッ…二人……美っ…うお」

「やった!」

「女子マネージャーいた!しかも二人!」

「「焼きそばパンゲット!」」

前日に女子マネがいるか否かで賭けをしており、いる方に賭けていた犬岡と芝山は無邪気に喜んだ。
山本はというと、顔を真っ赤に染め泣きながら「おぼえてろよォォォ!」とその場を離れていった。


体育館入りした後は主将同士が貼り付けたような笑顔で握手をし、何とも言えない空気が漂う。

準備が進んでいくなか、音駒の主将────黒尾鉄朗の視界にマネージャーの仕事が一区切りしたAが入り、「あれっ?」と声を漏らす。

彼は東京の人間だ。自分のことを知っていて、清風館中学の神崎Aか?とでも聞いてくるのかもしれない。
Aがそう思って身構えていると、黒尾がゆっくりと近づいてきてじーっと顔を見つめた後「お前、女だったのか」と言う。

予想外の言葉に無表情が崩れ、大きな目が丸くなった。

 
すかさず夜久が駆け寄るが「何言ってんだよ!失礼だ…ろ……えっ?!か、か、神崎Aッ?!」とこちらも目を丸くする。


「あ、この子清風館の神崎?!…なんか、勘違いしてたわ」

「どういう勘違いだよ!謝れ!」

「ごめんなAチャン。ところで君さ、女子から告られたことある?」

『え?…えーっと……』

八の字眉にして、黒尾から少し視線を逸らして頬を掻きながら「何度か…」といつもより小さな声で答えた。

「やっぱそうか!たまたまその1回を目撃しちゃってさあ…君、その時ショートヘアでウインドブレーカー着てたから体型とか分かりづらいし、オマケに女子から告白されてたから男だと思ってたわ。あのイケメン、神崎Aだったんだな。本当すまん」

「逆に今のAちゃん見てよくその時のイケメンと一致したな」

「あの時も今も鬼クソ美形ってことですよ。バレーも上手いし、嫌でも記憶に残るわ」

「確かに黒尾、美人だなあってよく言ってたし夜久もショートヘア良い!って言ってたもんなあ。神崎さん困ってるし、準備整ってきてるし、続きは休憩時間にでも話そう」

救世主、海が来てくれたことで一旦話が終わり、Aは「ありがとうございます」と一礼する。

「ごめんな。神崎さんは俺らのこと知らないと思うけど、音駒には神崎さんのこと知ってる奴が何人かいて、皆んな思いがけず会えて嬉しいんだと思うよ。因みに俺もその一人」

にっこりと笑みを浮かべる海をみて、Aは「絶対いい人じゃん」と思った。

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作者名:花雪 | 作成日時:2024年3月13日 22時

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