34.合宿最終日 ページ37
クリーニングに出していたユニフォームをマネ二人で受け取りに行った帰り道。
他愛のない会話をした後、潔子が「そういえば、Aちゃん…」と切り出す。
「このまえ日向を探しに行ってくれた時、菅原に何か言ってくれた?」
『え?』
一瞬何のことか分からなかったが、色々と思い出し「ちょっとだけ…僭越ながら…」と控えめに返事をした。
「ありがとね。なんかスッキリした表情になってて、私も、澤村や東峰もホッとしてるんだ。みんな更にやる気出してるから、Aちゃんのお陰だね」
『そんな…!生意気言っただけですよ。でも、先輩からそんな風に言ってもらえてすごい嬉しいです…』
空を仰いではにかむ姿をみて潔子は「可愛い」と口角を上げた。
・
そして迎えたGW合宿最終日。
烏野高校バレー部と音駒高校バレー部の部員たちが対面した。
「研磨!ねねね音駒だったの!?」
「…あ、うん」
「何で教えてくんなかったんだよ〜」
「だって聞かれてない…」
「でもあの時“またね”って言った!何か知ってたんだろ?」
「Tシャツに''KARASUNO HIGH SCHOOL''って書いてあったから」
日向はロードワーク中に音駒のセッター────孤爪研磨と知り合っていたようで、早速話しかけている。
温度差のある会話を繰り広げていると、音駒のエース────山本猛虎が割って入る。
「へいへいへい、うちのセッターに何の用ですか?」
「ごっ、ごめんなさ…」
「そっちこそウチの1年に何の用ですか?コラ」
「何だコラ」
「やんのかコラ、シティボーイ コラ」
「“やんのか”ってやるんだろ。これから試合なんだから。あとシティボーイとかやめろ。恥ずかしい」
「山本、お前すぐ喧嘩ふっかけんのやめろ。バカに見えるから」
すかさず山本と似たキャラの田中が乱入し両者睨み合っていると、両校のオカン、菅原と夜久がそれぞれ嗜めた。
「なんかすみません…恥ずかしいヤツいて…」
「うちもすみません…お恥ずかしい」
「はぅあっ!」
胸を押さえ叫んだ山本の視界には、荷物を運ぶ潔子とAの姿が映っていた。
女子に耐性のない山本にとって唐突な美人マネふたりは刺激が強い。
潔子が凛とした顔つきのまま小さく会釈したのに続き、Aも端正な無表情顔で会釈した。
彼女は彼女で知らない人に耐性がなく、絶賛人見知りモードである。
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作者名:花雪 | 作成日時:2024年3月13日 22時