風光る【HQ】 (ページ35)

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32.素敵ページ35

初めて会った時も体育館から走り去る姿を見て思ったが(カツラ事件の時)、やはりAの走ってる時のフォームが綺麗で菅原が「陸上とかやってた？」と聞く。

『いーや、やったことないですよ』

「まあ中学バレー部だったもんな。走り方カッケーな～と思って。バレーしてる姿もだけど、なんていうか、動きに無駄がないよな」

『へへ、ありがとうございます。私も菅原さんがトス上げてるとこ、綺麗だなって思います』

「えっ？！…あの神崎Aに褒められると、なんかスゲー嬉しいし自身つくなあ」

『だからどの神崎ですか』

「この神崎！」

フハハと二人して笑ったあと、菅原がしんみりと「ありがとな。下に天才が入ってきて色々と思うこともあったけど、頑張ろうって思えるよ」と言う。

少しの間が空いてからAが「こんなこと言ったら失礼かなとか色々気にする性格だし、嫌な気持ちにさせたくないからあまり声かけられなかったんですけど…」と切り出した。

『菅原さんがそういう葛藤というか…悩みというか…何か抱えてるのはなんとなく伝わってきてて…。私の話になっちゃいますけど、中学の頃１年生なのに部の１軍メンバーまで上がってスタメンになって、エースって立ち位置になって、２年になると副主将に抜擢されて……それで文句言われたとかいじめられたとかはなかったし寧ろ皆によくしてもらってたけど、元々その立ち位置にいた先輩方は''神崎がいるから''って色々と諦めたような態度をとってたから、時々やり辛くて…。』

そう話す横顔は綺麗だがどこか寂し気で、つい見つめてしまう。
少し下を向いたあとぱっとこちらを向いてきて、み空色の瞳と目が合った。頬が少し赤くなっている。

『でも、菅原さんはそんな態度とらないで毎日頑張ってるし、仲間思いなのもみんなから信頼されてるのも外から見てても分かるし、バレーが、烏野が…大好きなんだなあって伝わるから、えっと……素敵、だと思います』

どう締めたらいいか分からなくなり咄嗟に「素敵」という言葉を選んだのが可愛くて、菅原は笑って「ありがとう」と言った。