02.ベタな展開 ページ4
放課後、日向翔陽は期待に胸を膨らませ体操着姿で廊下を駆けていた。
憧れの小さな巨人がいた部活へ入部するのだ。
これからは新しい仲間と一緒に思う存分バレーが出来るのだ。
そう考えると自然と口角が上がり、胸が高鳴る。
ウキウキで廊下の角を曲がると同時に人とぶつかり、軽く後ろへ跳ねた。
まるで少女漫画のようなベタな展開だ。
視線を少し下へやると女子生徒がひとり、尻餅をついている。
柔らかそうな髪に、透き通った瞳、白い肌。
スカートからは細い脚がスラリと伸びている。
クラスで一番、否、学年で一番と言えるほどの美少女、神崎Aだった。
「ご、ごめん!!大丈夫か?」
『こちらこそごめんなさい』
日向が手を差し伸べる前にAはすっと立ち上がり、軽く頭を下げた。
「怪我とかしてない!?」
『大丈夫。…あなたは?』
「俺も大丈夫!!その……神崎さん…だよな?俺、同じクラスの日向翔陽!」
『あ、バレーの…』
「覚えてくれてんだ!!」
『熱意がすごかったから』
穏やかな声でそう言われ、日向は少々照れる。
それにしても本当に綺麗な女子だ。
同じ1年生のはずなのに、垢抜けているからか2・3年生のような雰囲気がある。
女子にしては身長があり、腰の位置が高くモデルのようだ。
『じゃあ、私そろそろ行くね。バレー頑張ってね』
「ありがとう!また明日!」
元気よく笑って体育館へ駆けていく日向の後ろ姿を暫く見つめ、Aは教室へと戻る。
荷物を背負って再び廊下を歩いていると、先ほど日向とぶつかった場所に学生証が落ちているのが見えた。
手にとってみると、これまたベタな展開。
日向のものだった。
せっかく本人の居場所が分かっているし、直接届けるとするか。
先ほど日向が駆けていった方へと足を進めるAの髪を、春の風が揺らした。
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作者名:花雪 | 作成日時:2024年3月13日 22時