20.食べな ページ22
体育館入りしてトイレから戻ってきても日向は落ち着かない様子。
見かねた澤村が潔子に一声かけてくれないかと頼むも、「期待してる」という爆弾的言葉を落としトドメを指す結果となってしまった。
「神崎、頼んだ…」
『えっ、ここにきて私ですか?』
どうしよ…と小声で言いながらも日向の元へ近寄り、少し考えたあと徐に日向の右手を掴む。
「えっ、A??」と頬を染めて戸惑う日向をよそにAは細い指先で''人''の字を3つ書いた。
(日向たち1年生組とも打ち解けてきてよりフランクに呼び合いかなり素で話せるようになったらしい)
『ほら、食べな』
((子犬とその飼い主かよ…))
『緊張すんの、わかるよ。私も試合前は毎回そわそわしてた』
「Aみたいな強いヤツも緊張するんだな」
『まあ、さすがに日向みたいに先輩に向かってゲロることはなかったけど』
「…。」
『でもいざ始まってみれば案外落ち着くかもしれないし、大丈夫だよ。頑張れ』
「あっ、ありがとう!」
((良い感じに収まってよかった…!))
と、安心したのも束の間。
試合開始のホイッスルが鳴っても日向は落ち着かず上がりっぱなしで、なかなか本調子とはいかない。
しまいには相手のマッチポイントとなったタイミングでサーブを影山の後頭部に直撃させるという今日イチのやらかしをする。
場が凍り付いたが、影山や田中の鼓舞(?)のお陰で日向の緊張は解け、烏野は波に乗って無事2セット目を取ることができた。
「向こうに影山みたいなサーブ打つヤツ居なくてよかったですね」
「ああ、ウチはお世辞にもレシーブ上手いとは言えないからな」
「油断だめです。多分ですけど…向こうのセッター、正セッターじゃ…」
ベンチで影山が何かを言いかけた時、黄色い歓声が沸いた。
「おお!戻ったのか、及川」
歓声の原因は、青城の監督から及川と呼ばれた男子だった。
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作者名:花雪 | 作成日時:2024年3月13日 22時