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01.春の日 ページ3

入学式で聞いた「うららかな春の日差しが心地良いこの頃」という慣用句のとおり、百花花開き吹く風が爽やかな日。

神崎Aは緊張で身体を強張らせていた。


春といえば出会いと別れの季節。

気候だけで選ぶと一番好きな季節だが、環境の変化や新しい出会いがある点を踏まえると一番苦手な季節かもしれない。


整った顔立ちに抜群のスタイル。
勉強はそこまで得意ではないが、運動神経が良く手先も器用。

クラスの人気者になってもおかしくはないスペックを持っているが、いかんせん人見知りで、クラスの中心人物になったことはこれまで一度も無い。


高校に入学して一番最初のロングホームルームにて、一人ずつ自己紹介をしていきましょうというお決まりの時間が来てしまい胸がざわざわと騒がしい。

こうなるだろうと分かって覚悟はしていたが、慣れないものは慣れない。


苗字がカ行のため早めに終わらせる事ができるのがまだ救いだ。

ワダやワタナべじゃなくて良かった、カンザキで良かった、と心の中で親に感謝する。



ドキドキしている間に前の席のカワサキさんの自己紹介が終わり、順番がきてしまった。


Aが椅子から立ち上がった途端、空気が少し変わる。

「すごい美人…」「可愛い…」などの小声がちらほら聞こえる。

先ほども触れたとおり彼女は相当整った容姿をしている為、自己紹介等の場面ではこうなることがお決まりになっている。

「神崎Aです。櫻木中出身です。部活は何に入るかまだ決めていません。よろしくお願いします」

高すぎず低すぎず穏やかな声でそう言い、再び着席。

A本人はド緊張しているが、顔や態度に出にくいせいか他の生徒からすると落ち着いているように見えいわゆるクールビューティーな印象を受ける。

端正な顔立ちをした女子の無表情は、高嶺の花のような雰囲気を纏う。

気になるもののすぐお近づきになるのはなんとなく畏れ多く、男女ともに初っ端から彼女へグイグイ話しかけに行くことはあまりない。

自身の容姿が整っていることを鼻にかけているわけではないが、Aにとってはそれが長年の悩みである。

人見知り期さえ終わればそれなりに笑ったり冗談なんかも言ったりするが、緊張するとどうしても表情がかたくなって周りに冷たい印象を与えてしまうのだ。


人生一度きりの高校生活、果たして友達は出来るのだろうか。

Aは周りにバレないよう小さく溜息を吐いた。

02.ベタな展開→←■設定■



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作者名:花雪 | 作成日時:2024年3月13日 22時

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