16.あのどのこの ページ18
3対3の試合が始まり、Aは得点係をしていた。
田中が絶好調なスパイクを打ち、日向が驚異のジャンプ力を見せ、月島が身長とリーチを活かしたブロックで攻撃を防ぐなど、序盤から濃ゆい勝負が繰り広げられている。
「王様のトスやればいいじゃん！敵を置き去りにするトス！ついでに味方も置き去りにしちゃうヤツね」
月島の煽り言葉が気になって一緒に得点係をしている木下に尋ねると、中学時代の影山の異名が「コート上の王様」だということを教えてくれた。
そしてちょうど日向たちもその話をし始めたので耳を傾ける。
「何だよお前！このあいだからつっかかりやがって！王様のトスって何だ！」
「君、コイツが何で王様って呼ばれてるか知らないの？」
「コイツが何かすげー上手いから他の学校の奴がビビってそう呼んだとかじゃないの？」
「ハハッ、そう思ってる奴も結構いると思うけどね」
「でも噂じゃコート上の王様って異名、北川第一の奴らがつけたらしいじゃん。王様のチームメイトがさ。意味は自己チューの王様、横暴な独裁者。噂だけは聞いた事があったけど、あの試合を見て納得いったよ。横暴が行き過ぎてあの決勝ベンチに下げられてたもんね」
少し前に日向と話した時は中学最初で最後の試合で影山と当たって負けたとしか聞いていなかったので、月島の話だけではうまくイメージ出来なかったが、「トスを上げた先に誰もいないっつうのは心底怖えよ」という影山の言葉でなんとなく察することができた。
ドキドキしながら見守っていると、日向の「でもソレ中学の話でしょ？俺にはちゃんとトス上がるから別に関係ない」という言葉で場の空気が変わり、ホッとして小さく息を吐いた。
そして影山のトスを日向が不完全ながらも相手コートに入れ更に空気が変わる。
『すご…』
Aが小さくそう呟いたのを聞き逃さず、菅原が「神崎ちゃんから見てもやっぱすごいんだ。影山喜ぶなあ」と笑う。
『なんか、上手いことしたら名コンビ爆誕な感じします』
「わかる！！…あの神崎Aと同じこと考えてたから天才かもしれない、俺」
『ふふっ、どの神崎ですか』
「この神崎！…そういえばこの前中庭でおもっくそフルネーム叫んでごめんな。嫌だったよな」
申し訳なさそうに両手を合わせる菅原をみて、Aはさっきの影山との会話を思い出した。
『全然気にしてないから大丈夫です！さっきのは影山くんがずっと神崎Aって呼び続けるから…』
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作者名：花雪 | 作成日時：2024年3月13日 22時
